第6話 異世界転生
「《ロルルルリ》ィィィィィィ!!」
「《魔眼解放》!」
プニプニのパチモンの口から出てるビームとアイレアの魔眼のエネルギーが衝突して周辺の地盤が崩れていく。スキル名を詠唱していた所を見ると、一応知性はあるっぽいねえ。
「手伝って方がいい感じー?」
「穀潰しが!」
「突然の悪口!?」
ま、敬愛するアイレア様(棒読み)の背後で胡座かいて寛いでるんで的確な表現なんすけどねえ。
「しっかし、新米様の魔眼と拮抗しているって事ぁ中々に強いね、彼」
生殖器らしいブツもないので彼なのかは知らないが、アイレアの魔眼は解放すれば一瞥するだけで並大抵の生命を消滅させる事が出来る代物だ。と、関心していたらアイレアさんは本人の2倍くらいある馬鹿でかい剣を取り出した。
「ふぁ〜〜…もう飽きた」
「ルピィィィィ!?」
馬鹿でかい剣に斬られたビームは黒い雷の礫となって空気中に弾けていった。ほぼ同時に、一瞬で間合いを詰めていたアイレアにプニプニのパチモンは刹那の間に7回も斬られた。
「アグ…ァイ…」
「? このキモいの、誰かの名前を呼んでいなかったか」
「そお〜? 断末魔にしか聞こえなかったよん」
「それで? 私が暴れている間に小賢しく動いていた成果は?」
俺は立ち上がって背後の成果ちゃん達をお披露目した。
「! でかした。6匹も捕まえたのか」
「今夜は揚げ物ですよ〜我が魔王。グッヘッヘッヘ…」
「キモい笑みを浮かべるでない」
「痛…くない」
口をへの字にした魔王からチョップが飛んで来たが、軽く小突かれた程度の衝撃しかない。
「手加減出来んじゃんよ!」
「うぅ、苦手なのだ。とっとと帰るぞ」
「ヘイヘイ…」
眠らせているグレイトプニプニ達を《
—
「おや? 愚生の施した《
新しいプニプニとされた天使様を手に取る。
「では次はもの少し戦闘が得意な
「おやおや、随分と活発的だね。お客人」
「これはこれは。召喚術士殿、ご機嫌如何か?」
豪奢…と表すのは齟齬がある様に思われるが、白を基調とした派手な外套を着こなす糸目の御仁だ。杖を飾る鈴がチリリと涼やかになる、幾たび聞いても心地よいものです。
「う〜む…主だった異常は肉体にも精神にも無いけど?」
「社交辞令ですよ、楽しませて下さいませ」
「う〜む…人の心は相も変わらず掴みどころが無いものだね」
「まったく貴方という御仁は…」
「良き哉良き哉! 解らぬこと・未知なる事象が未だ世にある! ハハハハハ!!」
爽やかな笑みを浮かべて彼は杖の鈴をうんと鳴らした。
「しかししかし! 君以外の客人達は少々活発さに欠く…ぶっちゃけ怠惰極まり無きかな」
「そのようで御座いますね」
「優等生の君からも何か言ってやってくれたまえよ?」
「無理で御座います、召喚術士殿。
顎に手を当てて、召喚術士殿は困った様な嬉しい様な表情をなされた。
「まあ良き哉! お客人方の仕事は
—
「何! 異世界の技術で改造された痕跡があるだと?」
「はいはい、口に唐揚げ入れたまんま喋らないの」
「はい。何でもこの世界の魔法とは概念として別種の方法で改造されている様です」
「転生者達…既にこの地に降り立っていたか!」
一応大きな魔力や生命力を感知する魔法と、空間の大きな歪みを検知するアイテムを装備しているが、反応はここまで一切無かった。
「なるほど、それで転生か…」
「急にどうした、ネビュ」
「得心が行ったのさ」
この世界の何者かが異世界から強大な力を持った者達を転生させた理由は不明だが…
「何らかの方法で異世界の強者の魂魄を召喚し、
「外道な真似を…!」
「手段を選ばない連中ではありそうだねえ」
「転生? 魂魄? …お二人って一体…あ、先に此方を」
スーテラはカウンターの下から重みのある皮袋を取り出して俺とアイレアの机に置いた。
「どれどれ…多くなあい?」
「こんな大金見た事ないぞ」
中身を確認したところ、ざっと50,000ダラーはある。グレイトプニプニ6匹だとその半分程度の筈だが。アイレアさんの口についた肉汁や脂を拭きながらスーテラに確認をば。と目線を送った瞬間には、茶髪の彼女は頷いて仔細を話してくれた。
「新種…と呼ぶべきかは定かではありませんが、お二人が対峙した改造プニプニは究極的にはこの世界でプニプニが進化しうる限界の力を有していたそうです。それで、依頼主としては新発見だとの事で本来の倍の報酬を用意された…と」
「なるほど、改造自体は異世界のものだけどステータスの限界まではこの世界のままなのね」
「どちらにせよ脅威である事に変わりはない」
「それはそうだけどねえ…未知の状態異常とかあったら厄介でしょう?」
「関係ない、全部滅ぼせば良いだけだ」
脳筋なアイレア様はドヤ顔で唐揚げを頬張り続ける。何だかこの無鉄砲な感じが昔の自分と重なって放っておけないのよなあ、ホント。
「それと! 今回の活躍でお二人の評価も上がりまして…」
「ようやくか」
「ようやくだねえ」
例のプニプニモドキが相当な手練れだったのはギルド側も理解した事だろうし、結構上のランクまで上がっちゃったりしちゃって〜??
「なんと! お二人には《プニプニマスター》の称号が授与されました!!」
「…」
そんなに露骨に死んだ魚みたいな顔をせんでよ、我が魔王。
「一応聞いとくんだけどもさ」
「はい! 何でしょうか」
「ランクが上がったりとか…」
「無いですね」
「他に何かメリットとか…」
「…んー、一応プニプニに関するクエストが指名で入ったり、協力を仰がれりする事はあるかもしれません!」
「かも、ねえ」
「…はぁ」
我が新米魔王はクソでかい溜息をついたし、俺もついた。そんな俺たちを見てスーテラは苦笑いを浮かべていた。
「だ、大丈夫ですよ! 改造プニプニの件は詳しく調査中という事でギルド上層部でも慎重に行動せざるを得ない状況なので。お二人の実力はやがて必ず評価されますから! ファイトです…では失礼しますね」
「やがて必ず評価される…か」
もう10年近く評価されていないんですがね〜…
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