I would love to.
昔から他人の目が怖かった。人の目を見て話すことが苦手だった。
顔や体型にコンプレックスを持っていた私はイジメの対象とされ、それ以降、他人が怖かったのだ。
そんな私は友人、ましてや恋人なんかを作ることができず、ついには大人になってしまった。
そんな私の前に、突然とその世界は現れたのだ。
黒いモニターの前に座り、パソコンの電源を入れる。
それが世界の扉を開く為の鍵。
扉の向こうに広がる世界は、共通の趣味を持つ人達が創った町が広がり、誰もが仮面をつけ、舞踏会のように手を取り合い、楽しそうにコミュニケーションを取る。そんな場所だった。
初めてこの世界に足を踏み入れた時、多少の緊張や戸惑いはあったが、楽しそうに踊る人達を見ているうちに、私も踊りたいと思えるようになった。
踊るのは、とても、とても楽しかった。
人と触れ合うことで、温かみを感じられたから。
仮面越しとはいえ、相手の目を見て話すことができたから。
相手も私の目を見て話してくれたから。
私が求めていたものが、この世界にだけはあったから。
今日も私は踊る。この舞踏会で。現実なんて、忘れて。
「私と一緒に踊ってくださいませんか?」
そっと手を差し出される。
「えぇ、喜んで。」
私はその手を取った。
その手は今までの誰よりも暖かく、そして、優しい手のように感じた。
誰もが仮面をつけるこの世界で、私達は出会った。
出会って しまった。
サイバネスティック・マスカレード ヤマイココロ @yamaikokoro
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