百合の造花編
第1話:出会い
さて、いきなりだが諸君らは匂わせキャラというものをご存知だろうか。
どのジャンルにも登場しやすく、楽にフィードバックさせやすい、物書きにとって大変都合が良く、扱いやすいキャラである。
大体の作品で負け犬として登場することがほとんどで主人公に対しての障害や、未回収の伏線の回収として使われて、気が済んだらポイ、そんな不遇キャラである。
某、玉を集めて龍をサモンする少年漫画のヤ◯チャ然り、噛ませ犬と同じ扱いを受けるのである。
さて、例を挙げたが、俺が言っているのはラブコメにおける匂わせキャラである。
幼馴染、あるいは友人の妹、さらには自身の義理の妹など多岐にわたって登場するが、大体正ヒロインに負ける。負けヒロインと言うやつである。
俺はこれが苦手だった。ラブコメ位良い夢で終わってくれてもいいじゃないか。当時高校生だった俺は、自身の推しの失恋を見届けた後、そう独りごちた。
それが、今の俺にどう関係してくるかと言うと———
「お父さん、抱いてあげて」
「えーと、どこをどう持ったらいいか……」
「あーもう、ほら」
頭と背中を支えられ、空中に浮遊する。しかし自身の体重で、完全に浮遊した状態ではないことがわかる。
「こうやって頭を支えてあげて、赤ちゃんはまだ首がすわってないから」
「えーっと、こう……かな」
誰かの手から、誰かの手と移動する感覚。
「ほら、パパでちゅよ〜」
「パ、パパだよ〜、これ僕のことがちゃんとわかってるのかな?」
「またじゃないかしら、目も開いていないし」
これ以上は怖いから、と言う理由で最初の位置に戻される。
「ねぇ、名前決まった?」
「あぁ、うん、決まったよ」
2人がこちらを見る感覚がする、まだ外の様子はわからないが、優しそうな瞳をしている2人だと思う。
「永遠、君の名前は
「永遠、いい名前。気に入ったわ。永遠、私とあなたの子供……」
「どんな子に育つかな?」
「あなたの子供だもの、きっと優しい性格になるわ」
「可愛い顔だ、きっと君に似て美人さんになるよ」
意図せず、自分の喉から鳴き声が漏れる。
それは止められそうなものではなく、あくまで自然の摂理のように思えた。
少し離れたところで、慌てる男性とそれはたしなめる女性の気配がする。
「あらら、おむつね。あなた、替えてあげて」
「えーっと、こう、かな」
今まで上に隠されていた部分があらわになる。そこには何もないように見えて、しっかりと女性を表すものがある。
そう、俺は女に転生していた。
これは、今から何年後に思い出して語ったものである。
◇◇◇◇◇
江戸川永遠、これが今世における俺の名前だ。
幼少の頃はまだぼんやりとしか保ててなかった自我が少しずつはっきりとしてきて、最近やっと整理がついてきたところである。
さて、ここで最初のラブコメ発言について視点が戻る。
最初に言ったそれはけして冗談ではなく、この世界は俺の前世で大ヒットしていたラブコメ漫画の世界にとても類似していた。
『あなたにも当たり前の恋バナを』通称あな恋。
女難がない主人公の
この物語、作者公認でハーレムエンドはないと言っていて、そう言う展開が好きだけど、ヒロインが報われないのが苦手な俺は、カスタマー根性でつい手が伸びてどハマりした。
それがどう関係してくるかと言うと———
「こんにちは!」
「あら祐希くんこんにちわ、ちゃんと挨拶できてえらいわねぇ」
「えへへ、とわ、いますか?」
「今部屋にいると思うから行ってあげて」
「はぁーい!」
バタバタと階段を上がる音が廊下から響く。
「『ガチャ』とわ、いるか?」
そこで私はみていた。
なにを……だって?やわなこと聞くんじゃない。
鏡を…‥だよ。
「われながら…‥びしょうじょ」
「なにやってるんだ?」
「あふれでるじぶんのびぼうにみとれていタ」
「?とわはなるしすとさんなのか?」
「……やめヨ」
だって、ねぇ、5歳児にたしなめられちゃ恥ずかしいってもんじゃないよ。
「こほん、まずはあいさつだヨ」
「あぁそっか、こんにちはとわ」
「こんにちは、ゆーき」
今世における俺の———私の立ち位置は主人公の幼馴染ポジションだった。無論、原作にはいない。
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主人公ヒロインくんちゃんの語尾についてなんですが、読みにくいって反応があったらルビを振るなどしたいと思います。
今までありそうだなと思ってなかったのを書いてます。読みたかったら自分で書くスタンスなので。
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