深奥の遺跡へ - 迷宮幻夢譚 -
墨屋瑣吉
序文:光と闇、分かちて
始原の記し
世界が始まる前、そこにはただ一人、『
『万物の母』は身の回りに漂う、不確かな混沌から光を
『万物の母』は『創造の光』を用い、
さらにその身の内に多くの光を集め、その身より『神々の大地』に共に暮らす『十の
『万物の母』が光により世界を創り出した時、混沌に残された闇が
『暗黒の主』は光り輝く大地を
『万物の母』は『暗黒の主』に対抗するため自らの
そして、『神々の主宰者』には暗黒を制御する力を与え、『始まりの人間』には自分と同じく光からあらゆるものを創り出す力を与え、共に手を取り合い『暗黒の主』と戦うように命じた。
しかし、『神々の主宰者』は、なぜ自らに光からあらゆるものを創り出す力が与えられなかったのか、不満を抱いた。
頭から産まれた自分こそが最も優れ、最も愛される存在である筈だ。なぜ自らに劣る『始まりの人間』に『万物の母』に等しい力が与えられたのか。『神々の主宰者』には認めることができなかった。
『神々の主宰者』はその嫉妬から『始まりの人間』を裏切った。『暗黒の主』が迫りくる中、背後から『始まりの人間』に襲いかかった。『始まりの人間』は倒れ、『暗黒の主』に喰らい尽くされた。
そして『神々の主宰者』は『万物の母』の怒りに触れ、『
ついに『暗黒の主』が『神々の大地』に迫り『万物の母』の前に立った、その時。『万物の母』から漏れ出す光を浴び、『暗黒の主』の内で喰らい尽くされていた『始まりの人間』が目覚めた。
喰らわれるも、未だ『暗黒の主』の身に取り込まれてはいなかった『始まりの人間』の半身が飛び出し、『暗黒の主』の身体を多くの欠片に引き裂いた。
引き裂かれた『暗黒の主』の欠片は、すでに己の内に取り込んでいた『始まりの人間』の残りの半身が持つ、あらゆるものを創り出す力の作用により、その欠片から『
それを見た『万物の母』は、欠片からこれ以上強力な悪霊たちが産まれぬよう、残された大きな欠片を集め『
しかし、『始まりの人間』はそれでは充分ではないと考えた。
『創られた者たちの大地』を『
そして全ての仕上げとして、創られた者たちがいずれその内にある『始まりの人間』の力に目覚め、その力を『始まりの人間』に還す
『悪神の王』たちもまた、創られた者たちが持つ『始まりの人間』の力と『暗黒の主』の欠片を集め、自ら が新たな『暗黒の主』となるために、それぞれの身から闇の
『悪神の王』は神々と等しき力を持つ『
『神々の大地』と『創られた者たちの大地』。そこに暮らす神々と数知れぬ精霊や動植物たち。そして、人と闇の怪物たち。
ここに全ては揃い、世界は整えられた。
『創られた者たちの大地』に生きる全てのものは、『始まりの人間』の『創造の光』と『暗黒の主』の『喰らい尽くす闇』を併せ持つ。
生けとし生きる者たちよ。
――ドゥルカ教最古の写本、エスカペテイ文書“始原の
そして、遙かな時が流れ、地上から神々の
■ 次章、「序章:たとえ、過酷な世界でも」に続く。
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