エリー.ファー

      

 生葱を食べてから死ぬ。

 自分の生き方を確かめる方法を探している。

 もしかしたら、死ぬかもしれない。

 そういう噂を聞きながら、死ぬ。

 自分の死体を見つめている。

 死体が生葱になっていく。

 もしかして、玉葱かもしれない。

 いや、よく見てみよう。

 これは、生葱だ。

 透明な容器に入れた生葱。

 僕と君の顔色を伺うのが得意な生葱。

 何故、生葱なのだろう。

 鼻につく。

 憂さを晴らしたい。

 いや、すべて冗談ということにするしかない。

 生葱には全てが宿っている。

 まさに、人生そのものだ。

 これが、玉葱だとそうはいかない。

 玉葱には悪魔が宿っているのだ。

 邪悪そのものであり、人間をたぶらかしてくる。

 カレーやハンバーグに入ってくるなど、最悪の行いである。

 即刻、消し去らなければならない。

 しかし、玉葱とは非常に強い魔力を持った兵器としての一面を持っている。

 一度スイッチが入ってしまえば、あたり一面が焼け野原となり、多くの民が家を失くし、放浪することとなるだろう。

 悲しみが溢れかえり。

 玉葱への憎しみが募る。

 その時。

 同時に、生葱への憎しみも生まれてしまうだろう。

 やはり、玉葱と生葱は同じなのだ。

 これを宿命と言う。

 人には分からない違いは、多くの問題を生み出し続けるのである。

 生葱には夢がある。

 多くの人々と手と手を取り合い、丘の上で夜が明けるまで踊ることだ。

 ダンスのジャンルは、ニクレデアソブスーツーヨヌトロワだ。

 もちろん、フィルデンスナマネギネギネギトでもいい。

 とにかく、笑顔の花が咲けば良いのだ。

 世界の広さを知るために、玉葱と生葱に挨拶をする。

 幾つかのエレメントを集めるうちに、人類は本物に直面することになる。

 まるで、世界のように広い思い出があり。

 まるで、水たまりのように狭い感情があり。

 まるで、硝子のように透明な関係がある。

 玉葱が坂を転がっていく。

 音もなく。

 風もなく。

 涙もなく。

 夢もなく。

 絶望もなく。

 何もかも、ない。

 生葱を焼く音が聞こえてくる。

 香りが漂ってくる。

 哀れだ。

 余りにも、哀れではないか。

 人間は、今夜も、玉葱の餌食になる。

 しかし。

 本来はパートナーであった、という側面を失ってはならない。

 人は、玉葱にも生葱にもなれる。

 それは、まさに、夢と希望と戦うことを宿命づけられた星々そのものなのだ。

 誰かの声が聞こえたら助けにいかねばならない。

 誰かの声が聞こえたら走って向かわなければならない。

 誰かの声が聞こえたら命を賭けなければならない。

 それは、玉葱も生葱も同じこと。

 身をすりおろしてこそ一流なのだ。

 変わっていくだけでは意味がない。

 裏切られてこその旅人なのだ。

 いつか、人間はすべて玉葱になってしまうだろう。

 その時、真実を知ることになるのだ。

 地球は大きく、宇宙は広大であり、思想とは巨大である。

 そう、その通り。

 立ち向かう相手としては申し分ないと言える。

 築き上げた信頼を消費しても、私たちには世界が必要だ。

 玉葱たちの罵詈雑言を浴びながら、生葱たちの声援と共に戦う。

 たった一つの真実と、想像の世界に入り浸って腐りきった脳味噌によって発生する成分だけで、胃袋を満たす怪人的思考によって。

 空飛ぶ心で龍となれ。

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