「無表情だけど言葉が素直すぎる系Sっ気×ツンデレ気味な姉御肌の同級生ラブ(仮)」

肥前ロンズ

ラブストーリーは筑前煮 前編

 私は、かなりモテる。

 これは自惚れじゃなくて、れっきとした数値ででる。

 今日は、手紙をもらった。LINEで告白を済ませる現代、手紙というのも珍しい。まあ、LINEグループに入っていても、私個人とLINE交換しているクラスメイトはほとんどいない。


「ってなわけで、呼び出しもらったから、先にご飯たべてて」


 隣の席の二人にお昼ご飯のお誘いをもらったので、私は先に断っておいた。


「スズちゃんモテるねえ~」

「まあね」


 そのうちの一人、ショーコに囃し立てられるが、事実なので否定しない。

 一方、もう一人のカズは黙っている。……まあ、元から口数の多いやつじゃないから気にしてない。

 私はとっとと呼び出し場所に行った。




 で、戻ったら、まだカズは食べてなかった。ショーコはいない。

「先食べててって言ったじゃない」

 私が言うと、「桜井さんは先に食べたよ。部活があるから」とカズが返す。桜井とはショーコの苗字だ。

「まあ、いいけど。……その筑前煮ちょうだい」

「いいよ。代わりに八宝菜」

「はい」

 お互いのおかずを交換して、お弁当を食べ始める。

「……なんて断ったの?」

「何? 告白? 気になるの?」

 私がたずねると、うん、とカズ。

「まあ知らない人だったから、普通にごめんなさい、って言ってきたわよ。学年も違うし」

「『友達からでもいいから』って言われなかった?」

「無理です、って返したわよ」


 私は人見知りはしない方だけど、よく知りもしないで告白してきた人間と友だちになれるほど、寛容な人間じゃない。やらしい目で見てくる知らんやつと友だちになるとか、生理的に無理。あと「断ったんだからこっちの要望かなえろ」みたいな圧がして気持ち悪い。

 そう言うと、そうなんだ、とカズが言う。


「知っている人間からはいいの?」

「ん? まあそうね。せめて名前と学年とクラスと顔がちゃんとわかっていれば、まああり」

「知っている人間からなら、今までの交友関係は絶たない?」

「そこまで狭量でもないわよ、私。まあさすがに、近くにいて恋愛感情持たれてたら、気づくと思うけど」


 ラブコメの主人公じゃあるまいし。

 あー、筑前煮美味しい。人が作ってくれる煮物からじゃないと、味わえない美味しさってあるのよねえ。

 なんて事ない会話と認識して、私はその日を過ごした。



 ■


 またか。

 一日で立て続きで来るな、呼び出しの手紙。放課後、屋上まで来てください、なんてベタな手紙をもらって、私は屋上の扉を開ける。

 はあ、やっと家に帰れると思ったのに。早くうちに帰って寝たいんだけどなあ……。


「……って、カズ?」


 そこには意外な人物。カズが立っていた。


「どうしたの、こんなところで」


 私が尋ねても、カズは黙ったまま佇んでいた。こころなしか、緊張しているように見える。

 何か用だろうか。しかし、第三者がいるのはここに来るだろう告白の相手にも悪いので、私は「悪いけど、しばらく席を外してくれない?」と言ってみた。

 しかし、カズは立ち退く気配がない。

 私はさらに続けた。

「私、今から告白されるんだけど――」




「好きです」





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