魔法探検俱楽部と魔女狩り騎士

ユールヒェン・グラ

第1話 魔法探検倶楽部始動①

「今月までに5人の部員を集めないと廃部だって」

ユイのその言葉に僕は辟易する。

「…別にいいじゃん。興味ない奴集めても仕方ないじゃん」

そう、別に僕達の部活が廃部になろうと知ったことではないのだ。

「良くないでしょう!せっかくサークル棟の一室借りられているのに、使用許可取り上げられちゃうのよ」

「でもなぁ……」

僕にはやる気がない。それは自分が一番よく分かっている。

「とりあえず、新聞部のデイジーさんが掛け持ちで入部してくれるから、ミシュナも最低一人、部員探してみて」

「面倒くさい…」

ミシュナこと僕は本当にやる気のないのだけど。

「じゃあ、私は教室戻るね」

「うん、また放課後」

ユイは僕の返事を聞くと、小走りで去っていった。

「部員ねえ…」

数合わせの部員なんて要らない。僕はただ新種の魔法が起こす現象、怪異を調査したいだけ。

書物や噂から推測を語り合ったり、何なら現地調査もする。

僕が望むのはそれだけなのに……。

「せめて女の子がいいなあ」

あ、別に女子に浮かれている訳じゃあない。

ユイ目当ての入部希望者があまりにも多くて嫌。そんな理由だ。

長い黒髪に金の双眸のナイスバディな美女。そんなユイに鼻の下を長くする男は性欲持て余す獣同然。そんなのと一緒の部室に居たくない。

「どうしようかなぁ……」

結局ずっと悩んだけど、何も思いつかなかった。


今日調べためぼしい怪異を紙に書き写して暫く。

帰ろうと鞄を持って立ち上がると、ユイが一人の女子生徒を連れて声を掛けてきた。

ユイより頭一つ小さい、銀髪に紅い目の、どこかぼけーっとした印象だ。

「うん?どうしたのさ」

「ミシュナ、この子入部希望者よ。アヌベス、こちらは魔法探検倶楽部の部長のミシュナ」

はやっ。

ユイ、もう部員候補見つけたの?早すぎないか?

「えっと……名前、アヌベス言う…。よろしくする」

そういえば同じクラスだっけ?名前は聞いた覚えがある。

「あー…部長のミシュナだよ。こちらこそよろしく」

「それじゃ、今日は顔見せってことで、部活の方針の説明しておくわ」

「分かった」

ユイの言葉に彼女はこくりと首を縦に振った。

「それじゃ行こうか」

アヌベスを連れて部室に向かうユイが僕のほうに振り向き、手痛い言葉を言ってくる。

「あ、ミシュナ。期日までに5人目を勧誘しなかったら、部長交代ね」

「え」

「新入部員も増えるから丁度いいわ。部室も整理します」

その暁に、僕がせっせと部室に集めたコレクションを一斉破棄するそうだ。

「…?部長、ミシュナ違う?」

「そうなるかもしれないわ」

アヌベスと話しながら立ち去るユイを見て動揺した。

…まずい。非常にまずいぞ。

遠征して苦労して手に入れたアーティストに、何かの門が開くというリンフォン。わら人形に髪がやたら伸びる人形に読んだものの血で完成される楽譜等など。

……。

僕の蒐集品を全部捨てるというのか!?

ユイのことだ。破棄は文字通りの意味だろう。

その僕より遥かに強い魔力を駆使して、浄化できるものは徹底的に浄化魔法で無力化。

どうにもならないものは亜空間に封印するはずだ。

僕程度の魔法使いじゃあ亜空間に封印された私物なんて取り返せもしない。

文字通りの、破棄。

「ど、どうしよう……」

僕は頭を抱えて机に突っ伏し、暫く動けなかった。

どうやって見つければいいんだよ!?

僕に友達がいるわけないじゃん!!!

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