ヒロインに転生したけど男性が苦手なので近づかないでください
こま猫
プロローグ
「ねえ、転生屋って知ってる? 最近、噂になってるみたいなんだけど」
「てんせいや? それ、天丼屋か何か?」
「違うよ! もう、アキはなんでもかんでも食べ物に結び付けるのやめなよ、そんなんだからいつもダイエット失敗してるんだよ」
「だってしょーがないじゃん、美味しいものはカロリーが高いんだよ」
「だってじゃなくてさ!」
「怒りっぽいのはカロリーが足りてない証拠なんだよ。キットカット持ってきたから、皆で食べよー」
「カロリーじゃなくてカルシウムじゃなかった? イライラするのってさ」
「まあまあ、アキのことはほっときなよ。で、何の話?」
「あ、そうだった、転生屋だった。ほら、生まれ変わりの方の転生。最近、流行ってんじゃん。異世界転生とか」
「小説とかでね」
「うん。で、友達から聞いたんだけど、お金払ったら希望の世界に転生させてくれる人がいるんだって。それが転生屋っていってね、新宿にある有名な占い師さんが紹介してくれるところなんだっていうんだけどさ」
「何それ、怪しいー。絶対詐欺だって、詐欺。お金だけもらって逃げるんでしょ」
「だよね……。普通、そう思うよね……」
「あれ、何かあったん?」
「うん……。やっぱ、騙されたんだよね」
「え? ミミちゃんが?」
「いや、わたしじゃないよ? 友達の話」
「転生屋の話をしてくれたっていう?」
「うん。中学の時の友達でさ、占いが好きで会うとそっち系の話が多かったんだよね」
「そっち系……」
「幽霊とかも信じてて、時々、話についていけなかったんだけどさ。でも、好きな本とかアニメの趣味が合ってたからそれなりに接点があったんだ。で、少し前にその子が、転生させてくれる人を見つけたって言ってて。それが、凄く細かく話してくれるものだからさ、ちょっと興味が出たんだよ」
「う、うん」
「そしたらさ、その子、少し前に自殺しちゃって」
「は?」
「嘘ぉ」
「お葬式、行ってきたんだ、わたし。で、その時にその子のお母さんが日記を見せてくれたんだ。この話、聞いたことあったのかって言われてさ」
「ああー……」
「それがさ、その子が転生屋についての胡散臭い話を信じた理由ってのが解って。学校でいじめられてたんだ。それで、今の人生から逃げて別の人間として生きてみようって考えたみたいなんだよね」
「いじめかぁ……」
「それはつらいね」
「うん。相談してくれたらよかったのにって思ってさ。何も、死ななくてもいいじゃんって。わたしだったら、いじめられたらやり返してやるのに。やり返すの、手伝ってやったのに、って」
「やり返す」
「腕力に訴えるのは駄目だよー」
「でもさ、痛い目に遭わせてやらないと相手だって付けあがるだけでしょ?」
「そーゆーのは、腕力じゃなくて権力を使うんだよ」
「お、権力?」
「アキ、言うじゃん。チョコ喰うだけの口じゃなかったんだね」
「うっさい。とりあえず親とか先生とか教育委員会とか、利用できそうな権力者に丸投げすればいいんじゃない?」
「他力本願」
「うっさい」
「でも……アキみたいな強さがあったら、自殺なんてしなくてもよかったのかもなあ……」
「ミミちゃん」
「でも、今はさ、その転生屋とかいう詐欺師にムカついてる。落ち着いて考えてみると、絶対詐欺だよね。そのうち、警察に捕まったりしてくれればいいのになあ」
「うーん……」
「あ、お昼休み終わっちゃう。トイレ行ってくる」
「あ、わたしも一緒に行く」
「じゃあ、わたしも……って。え?」
「何?」
「ちょっとあれ! 向こう! 南館の上!」
「屋上? え?」
「ヤバいよあれ、飛び降りじゃない?」
「嘘!? 嘘よね!?」
「ちょっと先生! 誰か先生呼んできて!」
「でも、もう間に合わな……」
「厭ぁぁぁぁ!」
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