夢と踊る

こたこゆ

プロローグ 空想

 1人の少女が、窓辺の机に向かっていた。

 色を含んだ筆が滑る度に、白い画用紙は理想へ近づく。手を止めてぱらりとページをめくると、そこには一週間前に仕上げた絵がある。

 当たり前とも言えるただそれだけ。けれどそれは、何にも代えがたい喜びだった。


 人は物を考える。

 その思考を表現する方法は、人により、十人十色だろう。

 ある人は、文字に思いを乗せ文章を書く。

 ある人は、声に意志を込め演説をする。

 そして少女は、色に空想を詰め込んで絵という形にする。


 たとえ少女が学校で辛い思いをしても、悲しみに泣いても、喜びに笑っても。絵は変わることなく、少女の理想や憧れをそのまま写し続ける。


 微睡む様に、うたうように、少女は空想を描く。

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