第4話 設定は続くよどこまでも

前回のあらすじ:変な精霊たちになんか服を着せられた。


真っ黒…漆黒で、銀糸のフード付きジャケットコート。

黒と灰の中間色のシャツとズボン。

右肩には申し訳程度に軽装がついていた。

漆黒の革靴は不思議なほどに足になじんだ。


「……………、成金感は消えましたけど、全体的に初心者装備じゃないですよね?」

「サービスだよ!」

「度を超えてるんですよ!」


間髪入れずにツッコミを入れる。


「そもそも!なんでさいしょっから普通のナビゲートAIじゃなくって精霊が出てくるんですか!!ありえないでしょう!」

「うぐっ」

「痛いところを………」


せきを切ったように愚痴ぐちというか正論の嵐が飛び、バチバチに精霊たちに攻撃を仕掛しかける。


「えーとネ。それは…」

「そのぉ…」

「み、【神子みこ】って知ってる?」


恐る恐る聞く風の精霊に、セイはにっこりと微笑み………


「知ってるとお思いで?」

「「「いいえ!」」」


声を合わせて否定する。

精霊をも怯えさせる圧がセイにはあった。


「最初からどうぞ」

「で、では僭越せんえつながらわたくしが…」


光の精霊の話を要約するとこうだ。

この世界では、精霊はそこかしこにいる神聖なものとして見られている。

魔法を使うためには必ず精霊を通す必要があるので、精霊との距離が近ければ近いほど少ない魔力で強力な魔法を行使できる。

精霊にも位があり、一番下から『微精霊びせいれい』、『下位精霊かいせいれい』、『中位精霊ちゅういせいれい』、『上位精霊じょういせいれい』、『神精霊しんせいれい』となる。

魔法に力を貸すのは主に微精霊であり、目には見えない。

下位から上になると、うっすら見えるようになってくる。

だが、せめて中位にはならないと人型と認識されない。

上になればなるほど数は減り、神精霊ともなればもはや神同然。

一千万年に一度声を聞けたら一生の自慢にできる。

そんな神精霊だが、唯一逆らえない相手がいる。

精霊神せいれいしん』だ。

全精霊を司り、従える力を持つ神だ。

12いる神の中でも上位の力を持つ神。

そんな神も、何億年かに一度代替わりの時を迎える。

愛子いとしご』、または『神子みこ』と呼ばれる後継者は、人界に生まれ、力を磨く。

神子の寿命は他人とは比べものにもならないほど長い。

およそ数百万年といわれる。

その数百万年が経った時、神子は真なる神へと昇級する…らしい。

そして話は変わり、

精霊神の神子には他の人とは違う魔力を持っているという。

質が良く、匂い(?)もいい上に味(?)もいい。

故に契約を求める精霊が後を絶たない。

それで、自分たちがその第一人者だいいちにんしゃであると…


「いやちょっとまてぇぃ!」

「はい?」

「いや『はい?』じゃないのよ!

 何で俺がその、神子?だってこと決定で話を進めてるんですか!」

「だって…神子ですし?」


ねぇ、と困ったようにほおに片手を当てて首を傾げる。


「はぁ…、まぁとりあえず、あなたたちが俺と契約したいって思っているのはわかりました。」

「じゃあ!」

「ですが!それとこれとは別です!!」

「え」

「俺は“まだ”あなたたちとは契約しません!」

「そんなあああああああ」

「“まだ”っつったのが聞こえなかったのかディーネ!!」


セイの言葉を聞いた瞬間にディーネが大声を上げる。

ピシャリといわれてその言葉の裏に『黙れや、オルァ』という文外ぶんがいの圧を感じた。


「まず、俺のlevelが20になったらひとりと、それからは15level上がることにひとりと契約します。

 契約する順番はそちらでお考えください!」

「俺が最初に契約する!」

「いいえあたしよ!!」

「今はしねぇっつったじゃねぇか!!」


コイツらマジで精霊なのか?

セイはそんなことを考えてしまった。

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