【9000PV感謝!】神狐様が通る!

夜風 天音

第一章 第1フィールド

カザグルマの始まり

第1話 始まりの風


「ぱーどぅん?」


にっこりと引きつった笑みでそう言う少女…否、少年。

シュッとした鼻筋はなすじ、小さな唇、黒い瞳を縁取る睫毛まつげは長い。

髪が長ければ間違いなく美少女だろう。

鼻にまでかかる前髪をヘアピンで抑えている。

そんな少年と対峙たいじするのは今度こそ少女。


「ぱーどぅんってどういう意味?」

「申し訳ありませんがもう一度言っていただけますかって意味だよ!!」

「なるほど??」


よくわかっていないようだが、プライドにしたがってわかっているふりをした少女。

それから少女はもう一度話し出す。

その話を要約ようやくするとこうだ。

コンビニでガラガラを回し、見事一等を当てた。

景品けいひんは最近話題の新型のフルダイブ型VRMMO二個セット。

しかし、少女は自分はひとつで十分。

誰にあげようと考え、兄たる少年に渡そうと考えたのだ。


「はーっ。拒否権は?」

「ないよ?」


え、何言ってるの、あったり前じゃん。

そう、がかやくもりなきまなこが語っている。


「だと思った。さて、こんな素敵なプレゼントをくれた我が妹にサプライズだ」

「え?なんか寒気が…。怒ってる?」


にっこりと青筋の入った顔で笑う少年に寒気を覚える少女。


「今夜の晩飯ばんめしはナスフェスティバルだ!」

「きゃああああああ!!それだけはやめてぇええええええ!」


少女の言葉を無視し、二階の自分の部屋へさっさと上がってしまう少年。

彼の名は星斗。

天乃星斗あまのせいと

ひとりの、平凡な少年の名前。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「せーいとっ」

「……………なに」


元気ハイテンションに話しかけてきた少年に返事とも言えない単語でそっけなく返す星斗。


「勉強教えて!!」

「ハァ?修斗しゅうとたのめよ」

「えー、セイの方がわかりやすいんだもん」

「なーにが、もん、だ。」


話しかけてきた元気な少年は遮那黎二しゃなれいじ

話題に出てきた修斗しゅうとは、クラスの人気者…ムードメーカーだ。

イケメンで成績が良く、優しい彼はきっと生涯しょうがいモテるだろう。

ちなみにだが、『セイ』は星斗の愛称あいしょうだ。


「学年一位が何言ってんですか」

「そのまま返すぞ何言ってんだ」

匿名制度とくめいせいどを使っても僕にはわかっちゃうんだな〜」

「ナルホド、鈴か。」

「ッ!?」


鈴。それは星斗の妹の天乃鈴香あまのすずか愛称あいしょうだ。


「お前がそんなだらしない顔になるのは鈴関係だ。」

「………」

「ほら、否定できない」


んべっと舌を出し、どこがわからないのかを聞く。


「えーとネ。まず、Bの4番!」

「は、お前これがわからなければ次のテストで学校退学エンドだな」

「そんなッ!?」


黎二れいじは興味があること(ゲーム関連)では天才だが、興味がないこと(勉強関連)にはさっぱりだ。


「ありがと、これで明日のテストは100点だ!」

「そう言って前回32点だったクセに」


ひらひらと手を振り、学校を出る。

ふと星斗は考えた。

そもそも昼休みではなく放課後に勉強を聞きにくるとは、アイツは俺の邪魔をしたいのか?

そう思いながら帰路をたどっていると、向こうからたたた…と白猫がやってくる。


「ブランカ!」

「にゃあっ!」


その姿を確認した途端とたん、無表情だった顔がぱぁっと花が咲くような笑みに変わる。

華麗かれいなるジャンプですっぽりと星斗のうでに収まる白猫…ブランカ。


「久しぶりだな。元気だったか?」

「にゃにゃぁ」

「そうだ、久しぶりにウチに来るか?」

「にゃっ!!」


生まれつき動物の言葉がわかる星斗は、地域の動物たちと友達だ。

鳥、野良猫に野良犬たちは意外と情報通じょうほうつうだ。

あるとき野良犬が言葉がわからないとたかをくくって、目の前で犯罪計画をペラペラと喋ってくれやがった犯罪者悪いヤツらどものことを星斗我らがポリスメンに報告したことがあった。

もちろん星斗はそのことを警察に通報し、お手柄になったことがある。


「じゃあ、ノワールを呼んできてくれ。」

「にゃっ!!」


ばびゅんとものすごい速さですっ飛んでいくブランカを見送り、星斗は再び帰路きろを歩き出した。

こころなしか少し嬉しそうに、早足になる。

星斗のもうすっかり暑くなった日差しで火照ほてったほおを冷やすように風が吹いていた。

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