ナンパですけど何か?

743(名無しさん)

ナンパですけど何か?

 今日は服を見に来ている。

もう6月の後半にもなると、汗が出てきて夏本番と勘違いするほど暑くなっている。(初夏といわれてるから夏だけど)


しかも昨日は雨が降ったから、湿度が高くジメジメしていて余計不快に感じる。

せめて、汗をかくならもう少し爽やかな理由で汗をかきたい。


最近は仕事に疲れて運動する気も起きてこない社会人の私が汗をかく爽やかな理由ってなんだよ。


運動をすることだ。



「もういいや、イ○ン行こ」


ここの浦道通りにはたくさんの服屋があるから来ていたが、もう限界だ。


イ○ンに行って涼みに行こう。

そして、スタ◯行こう。



 浦道通りを西に出て、最寄りの駅に向かう。

駅の前のロータリーを通って、建物の影に入ろうと早歩きで移動する。




「ねぇねぇ、お姉さん。ちょっといい?」


日陰に入ったときに後ろから声がした。

振り返ってみると、高校生らしき女の子だった。


高校生にしては少し幼く感じる顔立ちをしている。ゆるくふわっとウェーブをかけた茶髪ツインテールがより幼く感じさせる。


制服は着崩していて、スカートが膝上15cmくらいもあって、出ている太ももが眩しい。


私が高校生の頃も「パンツ見えない?大丈夫?」って心配したくなるくらいスカート丈が短い子がいたのを思い出した。


あの頃の私にはそんな度胸はなかったし、今もない……


出せるのはある意味尊敬する。


もう一度言っとこう。 


眩しい。


「お姉さーん」

「お姉さーん、おーい」


「あ、ごめん! えっと、何かな?」

思い出していて、思わずぼーっとしていた。


「お姉さん。私の足をじっと見てどうしたんですか?」


少し目を細めて、「やらしいことでも考えてるんですか〜」と言葉に出さないが聞いているように感じた。


「あ……」

「すみません!!」


女子高生の太ももをガン見していて、謝っている私がいた。


何をしてたんだ、私は!

女子高生の太ももをガン見とか気持ち悪過ぎる!

私なら距離を離して、一生視界に入らないようにするレベル!


小悪魔笑顔している女の子にちゃんと視線を向けて、仕切り直すために口を動かす。


「えっと……それで何か用があったんだよね。

何か用かな?」


「そうです、そうです」




「あの、お姉さんちょっとお茶しません?」


んーと、なんだ?


「お茶?」


「はい、お茶です」


んー、分からん。

よくあるナンパの誘い文句としか聞いたことないが?


実際はどうかなんて知らないしたぶん……いるかも?


そんなことを頭に出している間に女の子は指の先を合わせて、話を続ける。


「お茶するのはどこでもいいですよ。お姉さんのお気に入りのとこでもいいですし」


「ちょっと待って」

頭に出ている疑問を外へ出してみる。


「もしかしてナンパ?」



「ナンパですけど何か?」


当たり前かのようにボールが返ってきた。




JKに人生初ナンパされた!?


随分可愛らしいナンパだなぁ。

えー……、何で私?


「どうですか、お姉さん?」

「もちろんお時間あればなんですけど……」


「ちょっと考えさせて」



とりあえず時間をもらうことにした。


別に時間はあるけど……女子高校生を連れていていいの?

少し考え、結論を出す。




あれ、アウトじゃね?


「えっと、ごめんね」

「ちょっと時間なくて……」


断らせてもらうことにした。

さすがに警察のお世話になるようなことはしたくない……!




「お姉さん、嘘つかないでください」


真っ直ぐで鋭い視線で私の目を見て、急に発された低くなった声の言葉に固まる。


ばれた……。

時間に余裕があること。




「お姉さん、お時間ありますよね」


「あっ、はい」

ギャップに驚いて、頭が最後まで動く前に言葉が出てくる。


「じゃあ、行きましょ〜」


私の右腕を引っ張って、元気に駅に向かう。


「ちょっと待って」

いや、この子力強っ!

全く自分の方に寄せれない!


「本当に待って!」

「見ず知らずの大人が女子高生とお茶はだめでしょ!?」


「大丈夫ですよー、今はT○itterのDMで大人の方と繋がることもありますから」


「大丈夫なの、それ!?」

一回、止まれたが結局引っ張られていく。


そして、叫んだら余計に目につくと気づいたのは、あとからのことだった。


 


 私を引っ張ってずんずん行っていたのに改札口に向かう途中で急に立ち止まって、振り返る。

「私、浅山あさやままりです! 名前を言うのも聞くのも忘れてました。

お姉さんのお名前は?」


そういえば自己紹介していなかったな(?)


「私は篠原しのはら珠里しゅりです」

「よ、よろしくお願いします」


「はい、よろしくお願いします!」




まさか女子高生にナンパされて、押し切られて、挨拶しているとは……




鞠ちゃんがまた歩こうと足を前に出そうとしたけど回れ右をして、つま先が向いていたのは私の方だった。


「珠里さんはどこに行きたいですか?」



「あー、そっか。 まだ、話してなかったもん」


「ちょっと、あそこで休みながら考えようか」

近くにあるカフェを指さす。


「賛成です!」



もういいや、楽しんじゃえ(ヤケくそ)




ちょっと待って。

なんで私、時間があるように見えた?


そんなに休日をエンジョイしてるように見えた?


そんなに暇人に見えたのかな?




後者だったらどうしよ。


なんか恥ずかしくなってきたかも……



そんなことを考えながら、3、4組いる列に並んでいた。





























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