第32話 決闘を申し込まれました
――教室の中には、既にピサロの姿があった。
静かに机に座っていた彼と、パチッと目が合う。
「……」
「お、おはようピサロ……」
「フン」
すぐにプイッとそっぽを向くピサロ。
うぅ……気まずい……。
明らかに毛嫌いされてるじゃん、僕……。
「おやおや、なにやら朝からピリピリとした雰囲気が流れてますねぇ」
「! クーちゃん!」
続いてクーデルカがやって来て、背後から声をかけてくる。
「ささ、お二人とも教室に入ってください。ホームルーム始めますから」
促されるまま僕とカティアは席へと着くと、クーデルカは教壇へと上がる。
「おはようございます皆さん。昨日はジャイアント・スコーピオンの討伐お疲れ様でした。当たり前ですが新入生クラスの中で最速の討伐依頼達成ということで、テオドール校長も大変喜んでいましたよ」
「へー、そうなんだ」
「な、なんか反応薄いですねぇ……。もっと誇らしげにしてくださいよ……」
あ、そうなんだ。みたいな反応を返されて微妙に肩透かしを食らった様子のクーデルカ。
でも入学三日目で討伐依頼を受けてれば、そりゃ最速になるでしょうねーと予想できたというか……。
「ま、これでピサロもリッドもお互いの力がわかったことですし、今日から仲良く――」
「……ふざけるな」
ポツリ、とピサロが呟く。
「え?」
「俺は納得なんてしていない。それにコイツだって、まだ全力を見せていないはずだ」
非常に苛立った口調でピサロは言う。
彼はダン!と椅子から立ち上がると、
「リッド・スプリングフィールド、俺はお前に〝決闘〟を申し込む」
「え…………えええぇぇぇッ!?」
決闘!?
なんで!?
あまりにもいきなりすぎん!?
困惑する僕を、ピサロは冷たい眼差しで睨み付けてくる。
「……お前の本気を俺に見せてみろ。じゃなきゃ認めないからな。お前が俺より強いなんて……!」
「い、いやでも、それは……」
「駄目ですよ、ピサロ」
ピシャリ、と言い放ってクーデルカが止めに入ってくれる。
ホッ、流石は先生。
生徒同士の喧嘩を止めてくれるなんて、やっぱりクーちゃんにも担任としての使命感が――
「リッドが本気を出したら、あなたが死んじゃいます。決闘をするなら
――ズダーンとすっ転ぶ僕。
ちょっとクーちゃん!?
喧嘩を止めるんじゃないの!?
ちゃんと担任の役目を果たしてよ!
しかも舐めプした僕と戦えとか、余計ピサロを煽るようなこと言わないでくれます!?
「先生……あまり俺を舐めるなよ」
「むふふふ……いえいえ、私は少しもあなたを舐めてなどいませんし、過小評価もしていませんよ?」
クーデルカは教壇を降り、俺たちの傍まで歩いて来る。
「ですが――幾ら口で言っても、納得なんてできないでしょう」
そう言って俺とピサロを交互に見て、
「ならば思う存分やり合いなさい。そうすればわかるはずです、【呪言使い】の恐ろしさと――その素晴らしさを」
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