第3話 健康で文化的な必要最低限の生活
私は現在体調を崩して、いわゆる「健康で文化的な必要最低限の生活」を送っている。
最初は生活保護を受給するのに抵抗があった。無理をしてでも働こうと思って、去年の今頃は必死だった。でも、体調は悪化するばかりだった。
ダメ元で生活保護を申請した。無事に通った。一安心した。
こんなことを書いたら、働かないのにお金もらうなんて、と思う人もいるかもしれない。でも、人間身体が資本なのだ。
医療費が無料になった。病院に行った。生活保護受給前は医療費をケチっていて、いろいろなところにガタが来ていることが判明した。
そうか、今は身体を休める時なんだな。そう思った。
久しぶりに脳神経外科に行った。偏頭痛と緊張型頭痛が慢性化していて口から飲む薬での対処が難しいということになって、偏頭痛の予防薬の注射を2本打った。家に帰って薬価を調べたら、1本4万円以上、保険適用で14000円程度のものだった。びっくりした。痛かったけれど、これで寝込まなくて済むなら、と思って、腕とお腹に一箇所ずつ打った。腕は痛かったけど、お腹はあまり痛くなかった。コンプレックスだったお腹の脂肪に初めて感謝した。
医療費がタダになったから、今まで行けてなかった病院に行こうと思った。薬の服用が増えた。それでも、身体が良くなるなら、と思った。
もちろんいいことばかりではない。生活保護者は財産になるものを手放さなきゃいけないから、結婚式につけたいなと思っていたすごく思い入れのあるダイヤのネックレスをキャンセルして返品した。本当に申し訳なかったし、私としても残念だった。指輪も売った。お気に入りで、はめては何度も見返して幸せな気持ちになるものだった。でも、そうするしかなかった。割り切って、気持ちを切り替えた。
生活保護者は借金をしてはいけないから。奨学金も含めて債務整理をすることになった。いわゆる自己破産だ。官報とブラックリストに載るのか、と心底落胆した。
とある料理教室のクレジットもその対象になっていたから、その料理教室の受講が難しくなった。今後自立したら現金一括でもダメですかと聞いてみた。恐らく難しいだろうと言われた。気分転換になっていてサードプレイスだったのに、残念だった。
反省はしている。でも後悔はしていない。今回の一件で、ローンを組むリスクを身をもって体験した。色々な人の優しさに救われた。
料理教室に通って、玉ねぎが好きになった。生は苦手だけど、色々な料理に旨みを足してくれるんだなって思った。長ネギも少しマシになった。肉や魚の臭みがとれるんだなと思った。
本番はこれからだ。これからどこまで回復していくか。普通の人みたいに活発には動けない。でも、自分は自分でいいんだな、自分が自分を肯定してあげようと思った。生きてるだけ、幸せなのかもしれないと思えるようになった。
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