僕がただ年上のお姉さんを甘やかすだけの話~子供の頃、年上のお姉さんに告白したら「キミがカッコいい男に成長したら恋人になってあげる」と言われたので、めっちゃ努力した~
嬉野K
年上のお姉さんを甘やかしたい
第10話 ヒーローですから
生気のない平坦な声で、眼帯の女性――
かすれて疲れ切ったような、そんな声だった。
「あ……ごめん……朝食……何もなかったよね」
「問題ありません」キッチンで料理をしていた少年が、「もうすぐ完成します」
「ありがとう……」まだ
「わかりました」好意は受け取っておく。「でも、そんなことはありえませんよ」
「……強情だね……なにをそんなに……」
「10年前、助けてもらいましたから」
少年はとある事情で
「前も言ったけど……今の私はもう……キミの思うカッコいいお姉さんじゃないよ? それでもいいの?」
「今の
「そう? 仕事クビになって、朝からお酒飲んで……突然現れた男の子に朝食作らせてるような女だよ?」
「朝食は僕が自発的に作ってますけど……」
「それもそうだ」
とにかく、関係がない。
彼女の現状がどうだろうが、10年前とは変わり果てていようが、関係がない。
「僕は
ひょんなことから始まった、10歳差の奇妙な同棲生活。
高校生の少年と、疲れ果てた社会人の、ヘンテコな関係。
☆
「朝食、完成しました」
少年が作り上げた朝食を見て、
「いやバイキング形式……? ここアパートの一室」
狭いアパートの一室に突如現れたバイキング。一流ホテルの朝食にも匹敵するであろう品揃えだった。
「お気に召しませんでしたか?」
「そういうわけじゃなくて……」
「23です」
「気合い入れ過ぎだよ……」
それは少年も自覚していた。10年間憧れた
「良い匂い……」
「すべて計算しています。
「5……5年……?」
「そうは思いません。僕にとって
ヒーローへのねぎらい。そして感謝と10年間の想い。それらがすべて詰まった朝食だ。
……ちょっと重い、だろうか。
「こんなには、食べれないよ?」
「問題ありません。残ったのは僕が食べますし……最悪捨てます」
「良いの? 今はフードロスがどうとか……いろいろ言われてるけど」
「そんなの知りません。
地球の裏側で他の人が餓死しようが知ったことじゃない。地球にダメージがあったとしても、僕には関係ない。
少年の望みはそれだけ。
「……これ、いただいていいの?」
「もちろん」
「……」
「5年修行しましたから」
「5年で行き着ける領域かなぁ……」
「ありがとうございます」
「その所作も一流シェフみたいだなぁ……ハイスペック男子だね」
そう言われると嬉しい。
「あなたのために努力しました。この力は……すべて
「……10年前の気まぐれが、こんなハイスペック男子を連れてきてくれるとは……」
「……
少年は改めて、自分の目的を告げる。
「僕は
10年前の恩を返すため……
いや、違う。一目惚れした初恋の女性に笑顔になってもらうため。
ただそれだけ。それだけのために、今の少年は生きている。
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