第36話 ビーチバレー魔法大戦
細い丸太を二本、砂浜に突き刺し、その二本目の間に網のような物を干す
そして、その二本の周りを、縄で四角く囲う
「これは……?」
言われるとおりに並べたはいいけど、これが何を意味するのかさっぱりだった
木に支えられた網が横になってる感じで…
「…あ、わかりました!こうですね!」
私は、干された網の下に入って、倒れ伏して頭を抱えるジェスチャーをする
『ハンモックからずり落ちた人のマネ!』
ぶふーっ!
意表を突かれた二人は、私の姿を見て吹き出して笑う
…って、あれ?意表突いちゃってる?
こういう事じゃないんですか?!
「ちょ、ちょっとお姉ちゃん…不意打ちやめて…っ」
「し、素人さんなのに、なかなかやるやん」
「な、何で笑ってるんです?!シチュエーション連想ゲームじゃなかったんですか?!」
「どうしてその発想に行きついたんや…」
違ったらしい…
うう…私、幼い頃に同年代の子と遊んでこなかったから…
「これはね、ビーチバレーって言うんだよ、お姉ちゃん!」
テラスちゃんが、四色に色分けされた、頭ぐらいの大きさの綺麗なボールを出してくる
「中央の網で仕切られた左右の陣地に、それぞれ分かれて
あのボールを手で叩いて相手の陣地に落としたら勝ち
って遊びや」
「ここで合宿した時のみやる遊びなんだけど、みんなに人気なんだよ!」
「へぇー…楽しそうですねっ」
ボール遊びはいくつか知ってたけど、これは初耳だった
場所が限定される遊びっぽいし、私が知らないのも無理はないよね!
…ないよね!
「まずは二人でやってみるから、お姉ちゃんは見ながら覚える感じで」
「了解ですっ」
………
……
…
「…なるほど、大体ルールはわかりました」
とりあえず、点数制の遊びで、あのボールを持ったらダメ、と
「それと、テラスちゃんが弱いって事も…」
身体が小さいのもあるけど、タイミングを取るのがすごい下手っぽい
さっきから、アマミさんにバシバシ点を入れられてる
「そ、そんなコトないよ!このあたしが弱いわけ…!」
「えいやっ」
「はぶっ?!」
こちらを向いた瞬間、ボールが頭に当たり、もんどりうって倒れるテラスちゃん
「ぬおおおおおお、天才のこのあたしがああああああ!
こんなのデータに無いよぉ!」
「うちは一試合ごとに進化し続ける!
つまりテラスっちのそのデータはすでに過去のものや!」
「なんだってー?!」
「なにこのノリ…」
急に娯楽小説の悪役みたいになってるテラスちゃんと、反対に正義側っぽいアマミさん
「ならば仕方ない…あたしはデータを捨てる!」
「あっさり捨てましたね?!」
そもそも、データがどうとかいう以前の実力差だと思う
「この技は身体…もといボールに負担がかかるから使いたくなかったけど…」
テラスちゃんは、海水にじゃぶじゃぶとボールを浸し、その表面をびしょびしょにした
そして、塗れたボールを上に放り投げて、せーので叩く(レシーブと言うらしい)
…そのはじく瞬間、ボールが赤く光り……
「くらえ炎の魔球ー!『火矛球』(ファイアスピアーボール)!」
「なんやてー?!」
炎をまとったボールが、アマミさんの元にゆっくり飛んでいく
彼女は慌ててそれを避け、ボールは砂の上に転がり、纏っていた炎は消化された
「な…そ、そんなんできるんか?!」
「水で膜を張り、外に魔力で炎を纏わせる!
詠唱無しでもこれぐらいはできるよ!」
「…まぎれもなく天才なんやけど、才能の使い方がおかしい!」
「えっへ…ほわあっ?!」
テラスちゃんは胸を張るポーズを…しようとしたところ
バランスを崩して砂にばふっと転がった
「と、とにかく、これで勝負はもらったよ!」
「いやいやいや、こんなん返されへんやん!どないしたらええねん!」
…普通のスポーツは、こういう魔法とかスキルとか禁止にするんだけど
魔法学校ローカルルールならありなんだろうか…魔法学校だし
「ん…待てよ…?」
手を顎に当て、ボールを見つめて考え出すアマミさん
何かを思いついたようだけど…嫌な予感がする……
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