第8話 警備隊のアスラン
店まで同行をお願いしたが「ここで結構です」と途中で別れようとした。
だけどアスラン様が「最後までお送りします」と後ろをついてきて、これはこれで居心地が悪かったがカフェよりはマシだった。
「妹が王立学園に通っています」
アスラン様が後ろから急に声をかけてくる。
「では義妹のセシリーをご存じでしょうか」
「ええ、失礼ですがあなた方ご姉妹の評判は良くない」
失礼だわ。でも事実なのよね。
「噂なんて当てにならないと、妹に言っておきます」
「別に構いませんよ。噂なんて気にしていませんから」
10分以上歩いて店に到着。お礼を述べてアスラン様の後姿を見送った。
クロードより少し背が高く、アッシュゴールドの髪にヘーゼルの瞳。
クロードとは対照的でストレスを感じさせる。商売人には向かないわね。
「クレアじゃん」と不意に声を掛けられて「ひゃい」と声が出てしまった。
「ははは、店大変だったな。でもお手柄だったじゃん」
「はぁ~ お手柄は警備隊の方々よ」
「うちの母さんもクレアは見る目があるって感心してた」
「それは光栄ね。おば様に宜しくね」
「あ、あのさ週末ヒマ?」
「ううん、忙しいわ。年末よ?」
「あ・・・そうだな。じゃぁ今度また」
肩を落として北風に吹かれながらカイトは帰っていった。
「うぅ寒い」
まさかデートの誘いじゃないわよね?
*****
多忙な年末も過ぎて新年を迎えたお祝いの席で父から爆弾発言があった。
「サーレン準男爵家がうちの娘との婚約を望んでいるんだよ」
「んまぁ 平民じゃありませんの」
義母の発言はむかついた。うちだって元は平民なのだ。
「しかしうちと並ぶ大店だ。共同で経営するのは悪くない」
「お父様、ミリアにはまだ早すぎませんか?」
「いやクレア、お前に申し込みが来てるんだよ」
「ええええ嘘でしょう!」絶対に嫌だ。
──ミリアの夫だった男なんてお断りだ。
クロードはミリアの誘惑を無視できたが、カイトは魅了されそうだ。
落ち着いて何か言い訳を考えなくては。
「カイトのおば様は反対でしょう? 私のような病弱な娘に跡取りは望めませんわ」しかも共同経営なんて前回の倍の苦労よ、断固拒否。
サーレン婦人は商才のある女傑。ミリアも厳しい躾に耐え切れず逃げ出したのよ。サーレン商店の従業員と駆け落ちしてたっぷりと慰謝料を払わされたわ。
「お姉様はお元気じゃない。強盗団すら捕らえたもの」
「セシリー 私が掴まえたんじゃないわ。第一に子供を産むには死ぬほど体力がいるのよ。私は無理よ」
「ふむ、そうだな、クレアには難しいな。断っておくよ」
「そうですよ、平民なんて」
前回は娘のミリアを嫁がせたのよ?よく言うわ。
「お願いします。今のお話を聞いただけで熱が出たようです」
「病弱なお姉様~ 早くお部屋に戻れば?」
「言われなくてもそうするわ。失礼します」
***
「ふぅ~~ カイトってば、何を考えてるのよ」
「おや、愛されたいのではなかったのですか?」
「死神さん⁈ …久しぶりね。迎えに来たのね」
「もう少し時間がかかりそうです」
「そうなの? そうだ、カイトの愛はいらないわ!」
「ならば拒否すれば宜しいかと」
「では今日は何の用なの?」
「お店の危機は去りましたが、あなたに危機が迫っています」
「は? ならもう目覚めさせて」
「否、乗り越えて下さい。では」
「ちょ、消えた・・・・そんな~」
私の危機なんて屑3人衆しか思い浮かばないわ。
「なんで肝心なことを教えないのよ~」
その夜私は高熱を出して倒れ、肺炎を起こして死にかけたのだった。
「危機って・・・これ・・だったのね・・うぅぅぅう」
おかげでサーレン家からの婚約の申し出は取り下げられた。
2週間寝込んでお見舞いの花と手紙が届けられていた。
ナタリー カイト クロード アスラン?
アスラン様は馬車で送らなかった事を後悔されていた。
自分のせいで風邪をひかせたかもしれない。
寒い街中を歩かせて申し訳なかったと。
カイトは婚約を諦めない、元気になったらデートしようと。
クロードは元気になったら二人で話したいと。
ナタリーは自分は勿論、クロードも心配していると。
そして体調がやっと良くなるとナタリーがやって来た。
クロード推しのナタリーとは正直会いたくなかったのだけど。
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