出不精

Rotten flower

第1話

戻れなくなってしまった。この文章は現代、進化しすぎてしまっている現実において脳電波で読み取られた僕の脳内最期の文章だろう。実質的な遺書である。仕方ない、僕らが僕ららしく生きるためだけに起こったことだ。結局責任は僕らにあって、誰かを恨んだり、誰かに恨まれたりすることはきっと、きっとないだろう。なら、大丈夫だ。現代、世界中では物品の生産が豊かになり、我々、星民せいみんの生活は非常に豊かになった。だが、それに伴い地球の環境がだんだんと変わってきた。

一番の危害が地球温暖化だろう。現在、室内気温は27℃である。しかし、これは発展し続け、クーラーの性能が上昇しただけで、室外気温は鉄ですら瞬時に蒸発してしまうほどに高くなってしまっている。

僕らはいつも外出時に対策をしていた。遮日光性しゃにっこうせいの日傘に大口鳥マナミの羽でできた耐熱性の服、靴も対策し最適な厚底の厚みらしい。まぁ、社外秘なのだとか。

そして、僕は今日、その対策を忘れたまま家を出た。でも、安心した。人の体は一瞬では溶けないらしい。体の水分量が多いとか、その日だけ太陽が弱かったとか考えたがそんなことを流暢に考えている時間はない。人が久しぶりに日光を肌に触れた感想を残しておく。それが僕に残された最期後のタスクだ。

とりあえず、太陽をこの視野に入れてみた。日集眩ひめぐらというものを始めて見た。嗅覚、聴覚、味覚は除く。いや、聴覚だけは書いておこうか。何かの異音が耳の中で響いていた。波長というものを聞いた人はこの世に僕だけだろう。

さぁ、本題、触覚だ。劇痛いたむ。それは途轍もなくだ。熱湯の中に手を突っ込んだことは、流石にないか。では、足に熱湯がかかったことを思い出してほしい。いや、流石にそのくらいはあるだろう。僕だって経験したことがある。

それの11,2倍程度の痛みだ。そして、それが長引く。それだけで聞いた人は狂いものだろう。

こう頭の中で思い浮かべているうちにも、僕は溶けていって、だんだんと僕から僕らしきものへとなった。


あれ、今何を話したのだろう。段々と脳も溶けてきてしまった。


だんだん、何もかも考えられずに——

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出不精 Rotten flower @Rotten_flower

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