リザルト

rouF Love(らふらぶ)

リザルト

 ここはどこだろう…暗い、永遠に暗闇が続く世界。

 見渡せど見渡せど、ただ黒い。終わりの見えない空間に、僕は立っている。

 目の前に文字が浮かんでいる。

「お疲れ様でございます。【リザルト】を確認してください。」

 そう書かれた文章の下に【リザルト】と書かれたボタンが浮いている。この、文字が浮いているのはどういう仕組みだろう…?

 怪しみつつボタンを押すと、まず様々な日数や時間が出てきた。死ぬまでの日数、合計睡眠時間、平均睡眠時間。僕はここでようやく、どうやら死んだことに気づく。そうか、死んだのか。

【次へ】と書かれたボタンを押す。すると今度は移動総距離、総歩数、今までにかかった合計金額、食べた物の量、飲み物の量など、様々な数値が映し出された。

 こんなに歩いたのか、こんなに飲んだのか、見ていると少し可笑しく思えてくる。

 合計金額の数字を押すと、何にいくら使ったのかも出てきた。四五一万よんひゃくごじゅういちまん円…こんな高かったのか、僕の大学の学費。

 また【次へ】のボタンを押す。次は数字系ではなく色々なものの名前が出てきた。僕の付けられたあだ名、これはあまり見たくないな。一番多く食べたもの、量換算だとやっぱりご飯が多いんだ。好きな匂い、ばーちゃんちの匂いか、懐かしい。一番聴いた曲。貰って嬉しかったもの、九歳のときの誕生日プレゼント。好きなヒーローの合体ロボを買ってもらったんだ、嬉しかったなぁ。

【次へ】を押す。好きな人が一覧で出てきた。初恋の子の名前が映る。懐かしい、元気にしてるかな、好きだったなぁ。

 僕のことを好きだった人の名前も出ている。あ、あの子、中学のときのクラスメイト。少し気にはなってた子だ。なんだぁ、好きだったんなら言ってくれればよかったのに。二つ返事で承諾しただろうな。

 家族の名前も載ってる。母さん、父さん、兄ちゃん、みんな愛してくれてたんだな。パンタ、お前も僕のこと好きでいてくれてたんだ!一生懸命世話してよかった。無性に嬉しい。

【次へ】。僕が大笑いした出来事が映像付きでまとめられていた。一つ再生してみる。あー、あったあった。いやぁ今見ても面白すぎる。お腹痛い。ずっと笑ってられるよ。ずっと…。こんなに楽しいこともあったんだよな。これからの人生も、きっと楽しいことはあったはずなのにな。

【次へ】。死因:縊死いし。首吊り自殺のことだ。そうだ、僕は自殺したんだ。辛いことから逃げたかった。楽になりたかった。もうこんな人生嫌だった。

 …でも、こんなに楽しいこともあったんだって、嬉しいこともあったんだって。リザルトを見て、食べた数とか歩いた歩数とか、そんなくだらないことを眺めて、そんなに悪い人生じゃなかったんだって思えたら…。

 悔しいなぁ。もっと生きたかった。もっと好きな食べ物食べて、きっともっと楽しいこともあっただろうな。腹抱えて笑えることが、この先もあっただろうな。

 でももう終わりだ。さっきまで右下にあった【次へ】の文字が【終わる】になっていた。

「来世はもっと、良いリザルトにして終わらせてやる。」

 僕はボタンを押した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リザルト rouF Love(らふらぶ) @rouF_Love

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ