84 鳳凰暦2020年4月30日 木曜日昼休み 国立ヨモツ大学附属高等学校・中学校内ダンジョンアタッカーズギルド出張所3階第5ミーティングルーム


 佐原先生に連れられてやってきたミーティングルームに入ると、そこには女の子がたくさんいた。2時間目にカメラの方を向いた鈴木だけだと思ってたから、私――矢崎絵美は少し驚いた。


 鈴木以外は知らない顔だ。寮の歓迎会では話したかもしれない。でも、覚えてない。あの時も近くにいたのは同じ1組がほとんどだったはず。


 私の代わりに、佐原先生がいろいろと説明した。とても助かる。ところが、その説明で、鈴木ではなく、鈴木以外の女の子たちが真剣な表情で私と先生を見た。


「……許せない……事情はわかりました。佐原先生、あたしたちに任せて下さい」

「絶対に大丈夫だから! 今からいくらでも挽回できるから! あたしたちが一緒だから!」


 口を開いたのは二人。一人は先生に、一人は私に向かって。


 ……挽回、できる? 本当に?


 1時間目に、元パーティーメンバーと月城の謝罪を受けて、それでも何かもやもやとしたものを心に残しながら、別の部屋へと連れ出されていくあの人たちとは別れ、佐原先生からはWEB授業を見るように言われた。


 WEB授業を見ていた2時間目は、クラスの全員が元パーティーメンバーのような人たちではないということが理解できた。私に同情的で、支えようとしてくれる人もいた。敵のような人だけでなく、味方のような人も、何人もいた。


 外村のように、自分がムカついたからと言いながら、私のために動く人。

 設楽という彼女のように、考えるより先にとにかく助けようと動く人。

 鈴木のような、完全に出遅れてしまった、アタッカーにはもうなれないかもしれない私を、あっさり受け入れると決めた人。


 そして、アタッカーになることをあきらめたくない、私。


「……挽回、できる?」


 私がそう問いかけると、女の子たちが真剣な表情のまま、黙ってうなずいた。鈴木だけは、にやり、という三文字が似合う笑みを浮かべて、言った。


「余裕だな」


 どうしてそんなに自信があるのかはわからない。でも、鈴木は自信満々に見えた。


 それを聞いてため息を吐いた佐原先生が私の肩を軽く叩いて外に出ると、私は何枚かの書類に名前や日付を記入して、鈴木ではなく、女の子たちにそこから連れ出されて、放課後のための準備をさせられた。


 その子たちはみんな、とても親切で、不思議と私は気持ちが温かく、そしてほんの少し、恥ずかしくなったのだった。


 ……しかし、替えの下着の用意はなぜ必要?





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