14 鳳凰暦2020年4月21日 火曜日朝 小鬼ダンジョン
今日はトレインはやらずに、最速でクリアする。僕はそう決めて、小鬼ダンに入ると同時に今の全力で走った。全力疾走はゴブリンを完全に置き去りにするスピードなので、トレインよりも最終的には早い。装備はショートソードで、二刀流はなし。
1層は最短ルートならゴブリン22匹。全力で接近して、気づいて何かしようとしているところへ体ごと飛び込んでショートソードを突き刺す。心臓へ。そのまま魔石に変わると、魔石が落ちる前にキャッチして、次のゴブリンへ向かう。ショートソードを振るうことさえない。切っ先を心臓に合わせるだけ。これはラム走というRTAで最速クリアを目指す時の戦闘法だ。
1層で最後の、22匹目のゴブリンの魔石をキャッチして、そのまま2層への下り坂も走る。1層では当然のようにノーミスだ。今度は左手にもマジックポーチから取り出したショートソードを握る。
2層の最短ルートは13エンカウントで26匹のゴメイ――ゴブリンメイスだ。ここからは魔石キャッチの難易度が跳ね上がる。両手にショートソードを握っているので、キャッチする時は親指と人差し指以外の3本の指で僕は何とかしている。さすがに利き手ではない左手ではキャッチをミスることもあるし、慌ててショートソードを落とすこともある。
魔石を無視して行けばクリアタイムそのものは記録的だろうけど、それでは趣がないし、ツマラナイ。
2層では4回のキャッチミスでタイムロスをしたけど、それでもトレインよりも断然、早い。ミスに悔しさは感じる。それでも、ミスをしない、緊張感のない状態は、自分が積み上げた鍛錬の先にあるものにしたい。
3層は最短ルートで9エンカウント、27匹で、そのうち9匹はアーチ――ゴブリンアーチャーだ。アーチが矢を放つタイミングによっては、ソード――ゴブリンソードマンの心臓を外して、ひと手間増えることもある。矢を避けたり、防いだりしながら、魔石をキャッチするのは2層以上に難しい。ベストはアーチが矢を放つ前にソード2匹を刺し殺し、魔石をキャッチすること。
まあ、完璧にはできないし、だからこそできたら嬉しい。3回目のエンカウントで矢を避けながらの魔石キャッチに失敗、5回目のエンカウントでは矢を避けたことで左のソードの心臓を外し、右手で魔石キャッチをこなしながら首を斬りつけたけど、その衝撃で右手のショートソードと魔石をファンブル。これは大きなタイムロスになった。
ボス部屋までの間に、左手はショートソードからメイスに持ち替えて、ボス部屋の扉を肩で押して入る。
ゴブリンソードウォリアーが叫んでる最中に突進して襲いかかり、右手をメイスで強打してバスタードソードをファンブルさせつつ、ショートソードは心臓をピンポイントで刺し貫いた。叫んでる間は無防備とか、あまりにも馬鹿だろう。魔石は、キャッチはサイズ的にぎりぎりで難しかったけど、さすがにドロップしたバスタードソードはそうはいかない。
「……なんか、ここんとこ、ドロップ運がいいな」
メイスとショートソードをマジックポーチに戻して、バスタードソードも入れた。そのまま転移陣に飛び込んで1層へ。
外へ出て、ゲートも出る。ギルドでゲート記録を確認するのが正確なタイムだけど、腕時計では――。
「29分37秒、か。僕のソロなら外ダン未経験の今でも、30分、切るんだな。流石に疲れるけど……」
まだ岡山さんは来ていない。
今のうちに、放課後のあの二人の練習メニューを考えとかないと……。
僕は岡山さんが来るまで、メモ書きに没頭した。
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