詩「なあ、もし、さあ」

もし、さあ

あの頃の自分に

暗い、暗い闇の中で

遠いところだけを見つめていた自分に

もし、さあ

出会えたらさあ

言ってやりたんだ


「お前さあ、まだ生きてるぞ」


そう、言ってやりたい


まださ、未来は見えないし

過去は過ぎてしまった

まだ絶望しているといえば、絶望しているのかもしれない


でも、守られている

手を、はなさなかった

いや、はなせなかった

いや、なんか残ってしまった

わからない

なんでな、まだ繋がってくれているか


なあ、にしお、やすなが、なんで手、はなさへんねん

まあ、連絡は、少なくなったけど


暗い、暗い、闇の中で、部屋の中で

明るい外を見ていた


あれから必死に働き

夜勤とか、一人職場とか、人の料理を作るとかさ

なんか

やらないだろうな、という経験を

いつの間にか経験して

今、ここに立っている

働いた、20年の重み


まだ絶望しているのかもしれないけどさ

必死に

耐えて


なあ、あの頃の俺よ

ここまで生き延びてしまったよ

そしてまだ生きてるよ


周りはさ

色々あったけどさ

きびしーい人もいたけどさ

いい人ばっかりだったよ


もう、終わりかもしれない

どこまで行けるかはわからない

何人、自分が後にするだろうと思った人を、見送ってしまったか

今日が、終わりかもしれない


そう思いつつ、まだ生きている

ありがたいことだ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る