悪役令嬢ぶってパーティを追い払ったら、ヤンキー女子に「仲間たちを逃がそうとしていた」ことがバレた。

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

建前令嬢

「おーほっほっほっ。ここはあなたの出る幕ではございませんことよ」


 安久谷あくや 紅麗くれいは、クラスメイトの符涼フリョウ ナコにペットボトルの水をかける。

 クラス転生に巻き込まれた学生たちが、ダンジョンを攻略中に仲違いをしたのだ。


 生徒たちの周りを、ハチ型のモンスターが囲んでいる。


「あなた方では足手まといですわ。ここはわたくしの手柄にいたします。みなさんはミッション失敗の手続きでもしてらっしゃいな! おーほっほっほっ」


 紅麗が、高笑いをしながら生徒たちを追い払う。


「んだよ。ナコさんのおかげでみんな攻略してきたってのに!」


「もうほっとけよ安久谷なんてよ!」


「安久谷さんサイテー!」


 生徒たちが、紅麗を置いていく。


 一人になった安久谷が、ひとりごちた。


「これでいいのですわ」




 だが、その余裕もここまでである。


「不覚でしたわ。わたくしとしたことが!」



 足を負傷して、紅麗は倒れていた。

 クモ型のモンスターに足を取られて、ネンザしたのである。


「この安久谷紅麗が、こんな初級ダンジョンで命を落とすなんて。ですが、みなさんは……!?」


 薙刀の一撃が、クモ型魔物を蹴散らした。


「フンフン! どけっての!」


 紅麗を守ったのは、さっき水をかけた符涼 ナコである。


「ナコさん! 逃げたんじゃ!」

 

「虫よけをかけられて、逃げるわけないだろうが」


「あなた、ご存知でしたの?」


「ニオイでわかった。あたしさ、スラムに住んでいたから鼻が効くんだ」


 さっき紅麗がナコにぶち撒けたのが、虫型モンスターを避ける虫よけだと気づいたらしい。


「あんたは手柄が欲しくて彼らを逃したんじゃない。みんなを無事に帰すためにオトリになったんだろ? 自分を犠牲にしてさ」


「な、なんのことですかしら? あなたもビビってお逃げになられたらいいのに」


「そういう強がりいいから」


 ナコが、紅麗に肩を貸す。


「他のみなさんは?」


「助けを呼びに行った。あんたのやってたこと、全部思惑はバレてるから」


 紅麗は、たちまち赤面した。


 クラスメイトたちにまで、自分のやろうとしていたことがバレているとは。


 これでは、ただの中二病だ。

 帰ったとしても、地獄が待っているじゃないか。

 

「でもさ、攻略しちまおう。あたしとアンタでさ」


「ええ。ありったけの魔法で拡散して、攻略して帰る! それでよろしくて?」


「最強のプランじゃねえか。やってやるぜ!」


 前衛をナコに任せて、紅麗は安心して詠唱を始める。




 彼女たちは後に、異世界から来た百合英雄として、崇められることとなった。

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悪役令嬢ぶってパーティを追い払ったら、ヤンキー女子に「仲間たちを逃がそうとしていた」ことがバレた。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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