第1116話 ラクドさんの料理

「えぇ……そんな悪人がこんな所に……」

「悪人言うなって。ただの成金傲慢貴族に熱い夜をプレゼントしただけだっての。なに、ジャパニーズはオレと趣味が合うって聞いてな。特製スパイスを持ってやってきたのさ。ま、みんなビビっちまって買いにきゃしねぇ」

「……いや、馬鹿だろ。香辛料がキツすぎる。一般人だと近づくことさえ厳しいぞ?」


あー、言われてみれば。

両隣の行列もラクドさんの店から離れるように伸びてるもんね。

りゅうくんも目をシパシパさせてるし。

あ、ハンカチハンカチ。

はい、ちーん。


「なんでぇ、これくらいでビビるのか?聞いてた話と違ぇな……ジャパニーズはマグマみたいなドロッドロの麻婆豆腐を20分以内に食べるって聞いてたぞ?」

「……どこのチャレンジグルメだよ」

「あー、あの番組たまに見ますよ。大食いならまだしも激辛グルメって食欲もそそられないし正直びみ……」

「……皆まで言うな。みんな分かってるんだから」


あ、はい。

にしても、激辛かー。

俺は『キュクロープスの加護』の影響である程度の辛さになったらセーフティロック的なのがかかるので食べれないことは無いんだけど……

翌日の、ね?

トイレが怖くて怖くて……

明日も忙しくなりそうだしなー……

健康第一で今回は見送らせて……


「……そういえばあーさん。お前激辛得意だろ?食べてみろよ」

「絶ッ対言うと思った!お前も得意だろう?よ、崩城の鉄仮面!」

「……その例えをするのはお前だけだからな?あの麻婆豆腐食べきれただけで鉄面と言われるのは心外だ」

「何だ、辛いの得意なのか!そういえばランクルから聞いたような?いいぞいいぞー!ヒャーハハハ!今回は特別だ!奢るから食べてけ!そこの鉄仮面様もな……おっと『爆装鋼帝』と呼ぶべきかな?閣下様」

「……ちっ、バレてたか。そしてお前、あの妖精の仲間だったのか」


そりゃバレてるやろ。

知識べらべら話してたしな。

てか、ランクルさんの知り合いだったんだ……

そういえばランクルさんが日本の神様から心臓もぎ取ってたんだった!

ラクドさん経由で返してもらうように伝えてもらおう。

てなわけで、ほぼ強制でラクドさんの料理を食べることに。

……奢りで嬉しくないの初めてかもしれない。





「そこの坊主は……まだ早いな。何か食べたいのがあるか?」

「ん!ぱい!」

「ほー、ぱいか!……甘いパイじゃねぇよな?」

「むー。みとぱいください」

「アップルパイが好きなんですけど、今はミートパイが食べたいみたいです……スパイスはやめてくださいね?」

「……辛いのにしてみろ?俺とコイツが黙ってないぞ?」

「わーってるよ。流石に嫌いやつの子どもならまだしも幼子に俺特製スパイスを振る舞う気はねぇって。特製ピザ2つにミートパイだな。今から焼くからちょっと待ちな」


……ほんとかなー。

なら俺の料理もスパイス減らしてもろて……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る