第1115話 ラクド・スヴニカ・ライヤー

「ヒャーハハハ、えれぇ魔力だと思ったらタジマアラタじゃねえか。こいつか大物だな」

「え?俺知ってんの?マジ?」

「……そろそろ自分の影響力を把握しろよ」

「いや、サインとか全然求められてないし……」

「亜人コミュだと人気の人だぜ?ま、オレの場合は他経由で知ったんだが」


店主が笑う。

……あ、この目。

本気で笑ってないやつだ。

しいて言うなら獣の目。

俺を観察している奴ですね。


「……いやはや、まさか会うとはな。オレの名はラクド。はぐれ妖精だ。人呼んで『炎の料理人』!よろしくな」

「へー!料理人なんですね!凄い!」

「……ラクド・スヴニカ・ライヤー。『殺戮満漢全席』『地獄の釜の管理人』『虐殺料理長』……グレムリンの中でも異質、機械よりも料理に精通した亜人……亜人の中でお前の名前は有名だぞ」

「ヒャーハハハ、褒めても何も出ねぇよ」


……ふ、不穏な単語が並ぶー。

店主のラクドさん、亜人というよりは妖精の中だと指名手配されているぐらいの極悪人だそう。

種族のグレムリンって確か機械にイタズラする妖精だっけ?

そんな妖精が料理人ですか……


ラクドさんは元々宮廷料理人。

しかし、宮中晩餐会の時に劇薬を盛って参加者を全員病院送りに。

そのまま料理を市中にばら撒いて1000人以上に被害をもたらしたらしい。


「あ、それ嘘だからな。尾ひれが付いてるだけだぞ。オレが殺したのは宮中のいけすかねぇ貴族だけだぞ。数は忘れたが」

「……どっちもどっちだろ。数千人が被害を受けてる」

「な、何をしたんですか……」

「ん?ただ香辛料を入れただけだが?オレおすすめの、な」


ラクドさんがウインクする。

……あ、これはアカンやつや。

無自覚にやっちゃったパターンか。


「……コイツは極度の辛党だ。事件の真相は宮中晩餐会に出された豚の丸焼きにギャングスター・ジョロキアの濃縮エキスをすり込んだものを食べさせたんだ。妖精は皆甘党……元々豚の丸焼きもカラメルをかけて焼くものだったんだが……」

「甘いなんてオレに言わせりゃ子どもだぜ!辛味こそ最強の味覚!辛ければ辛いほど最強になれるってもんだ!ヒャーハハハ!」

「……という異常者だ」

「……お、おう。マジで?」


思ったより小さい?

いや、人?妖精?を殺してるなら重罪やんけ!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る