第152話 仙桃招来

「お茶、持ってきました!」

「ありがとうございます。あ、名前聞いてなかった」

「何じゃ、挨拶しておらんのか」


そういえば、挨拶も全然せずに連れてこられたんだった。


「ティムール・ズル・ゴォジュって言います。ティムと読んでください!」

「ティムはサティロスじゃ。一応これでも成人済みじゃぞ」


へー、マジか。

てっきり子どもかと思ったよ。

声若いし。

とりあえずお茶を飲みながら雑談。

白沢のランファは世界を巡りながら薬を売っているそう。

買いに来るのは亜人。

亜人って結構日常にいるらしい。

そういえば、アステカ神話の神が探索者してるしな。


「で、薬屋ランファが俺に何のよう?俺、明日日本に帰るから早めに帰りたいんだけど」

「なーに、お前さんが『仙桃招来』を使ったからな。無事かと思って見に来た」

「あー、あのスキルか。あれランファにも感じられるのか?」


『仙桃招来』はランファから貰った『白澤の加護』の付属スキル。

『白澤の加護』は洗脳などの精神攻撃無効、毒、石化などの状態異常無効、あとは薬品などの調合をするときの失敗率がぐんと下がる。

状態異常とか無効になるのはいいけど、薬とか作らないから調合成功率が上がってもなーと貰ったときは思ってたけど、よくよく使ってみると料理に使えたのでヨキヨキ。


「『仙桃招来』は自分の魔力を溜め込んで実の形として残しておくもの。魔力の強さによって効果が変わるがお前の『仙桃』は身代わりクラスじゃ。ゲームで言うなら残機じゃな」


は?マジ?

俺、『仙桃招来』って体力回復アイテムを産み出せるスキルだと思ってた。

あれ俺の魔力だったんだ……

「ん?残機?ってことは俺一回死んだ?」

「いや、死ぬ前に残機を消費して全回復した感じじゃな。普通はそんな使い方せんぞ」

まぁ人間死んだら一発で終わりですし。

残機があるなら大事にするよね、うん。


「万が一と思って『仙桃招来』使用時に感じれるようにしておいたがまさか使う機会があると思ってなくてな。気になってここまで来たんじゃ。無事そうで何より」

「……そもそもあの桃にそんな効果があるとか聞いてないんだが」

「言ってないからな?そもそも『仙桃招来』は使用者の魔力依存だからな。残機になるぐらいの桃が育つには相当の時間がかかるぞ」


……そんなもったいないものを使ったんか。

悲しみ


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