振り返ると、ミノタウロスが倒れていた。

いや、倒れているのではなく何かにつぶされていた。

「そんな……あいつはここには出現しないはず！」

5メートルを超える巨体、濃い緑の肌に白い角

オーガと呼ばれる、下層～深層に出現する危険なモンスターの姿があった。

ダンジョンのモンスターの強さは下に潜れば潜るほど強くなる。

下層のモンスターは基本4人以上のパーティで挑むことが必須とされているほどの強さになる。

オーガの強さはその腕から振り下ろされる一撃と体格に見合わぬ俊敏さからAクラスでそろっているパーティでも回避するほどといわれていた。

絶対に中層には出現しないモンスター、俗にいうイレギュラーモンスターというやつだ。

今ダンジョン3人娘はおそらくＣ～Ｂクラス、到底かなうはずがない。

「い……いやぁ……」

タンクの娘は後退を始めてゆっくり動いているが、ヒーラーと魔導士の二人は完全に座り込んで動けないようだ。

これはとてもやばい状況だ。

流石にこの状況を見てみぬふりするほどの男ではない。

とりあえずオーガの注意を俺に向ける方法を考えないと。

俺はバックの中を確認しながらオーガの前に走り出した。

取り出したのはステーキ用に買ってきていた胡椒の瓶。

これをあいつの顔に投げつけて注意を引こうと考えた。

胡椒が目に入って悶えない生物はいないだろう

俺は絶対に嫌なやつ。

大きく振りかぶって瓶を投げる。

放物線を描いてオーガの顔まで飛んでいく。

そのタイミングでマジックアローを瓶に向かって発射。

ちょうど目の位置で瓶に当たり中の胡椒が顔に降りかかる。

おー、目を抑えて後ろに倒れた。

今ならなんとか時間を稼げそうだ。

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