女王様は異世界でも鞭を奮って跪かせる

好舞☆美空【KOUMU*MIKU】

第1話*銃で私を殺れると思うなら殺ってごらんなさい

血走った目をして必死の形相で魔吏愛に銃口を向けている強面の男。

趣味の悪い派手なスーツ、そしてこれ見よがしの傷だらけの顔。どこからどう見てもその筋のお方だ。


『テメー!!よくも組をぶっ潰してくれたな!!』


はて?

どの組のことかしら?

私がぶっ潰した組事務所なんて両手両足の指じゃあ足りないくらいだからいちいち覚えてないんだけど?


『ふざけんな!ぶっ殺してやる!』


歌舞伎町の往来に銃声が木霊する。

極めて物騒な街だが流石に発砲騒ぎは珍しい。


魔吏愛は奇声を発して逃げ回るギャラリーには目もくれず、目にも止まらないスピードで腰に差した鞭を抜き奮っていた。



バシュ!!!!!!!!!!!!!!!



音速を越える鞭はソニックブームを発生させ見えないバリアで弾丸を弾く。


【そんかバカな!?】


と突っ込む暇もなく強面のオッサンはソニックブームにぶっ飛ばされて背後のビルに激突して破壊する。


「フンッ…産まれた時から女王様として鞭を奮っていた私を舐めないことね!」


突っ込みどころしかないような捨てセリフを完璧にのびている強面のオッサンに浴びせて一瞥。

オッサンの生死は不明だがそんなことはどうでもいい。他人の心配などしていたらこの街では生きていけないのだ。


そして悠々と立ち去る魔吏愛。


だが今日に限ってそこで終わらなかった。


魔吏愛の背後にマシンガンを携えた強面のオッサンが8人程狙いを定めていたのだ。


『テメー!!!!!!!!よくも組をぶっ潰してくれたな!!!!!!!!』


どうも8人別々の組のヒットマンらしいのだが勿論魔吏愛は全く覚えていない。


はて?

どこの組事務所だったかしら?


首を傾げる魔吏愛に向かってマシンガンが一斉に火を噴く。


またしても目にも止まらないスピードで鞭を奮う魔吏愛。


「ハァー!!!魔吏愛流千条鞭!!!!」


どこだかの獄長も真っ青な鞭捌き。


コンマ1秒を遥かに越えるスピードで四方にソニックブームを撒き散らかす魔吏愛。


周囲のビルを破壊しながらぶっ飛ばされる強面のオッサン達。

もはや歌舞伎町は半壊している。


今更だが魔吏愛はヤクザ屋さんでもヒットマンでも何でもない。一介のSM倶楽部の女王様なのだ。


だが彼女の戦闘力は一国の軍隊にも匹敵しているのだ。

【鞭の一振りで津波を止めた】【核爆弾と同じ扱いで各国から警戒されている】といった噂が真しやかに囁かれている。



その魔吏愛が都心を半壊させている。

各国に緊張が走った。



既に魔吏愛の上空には自衛隊の戦闘機が飛び交い監視していた。


「うるさいハエだな。消すか…」


と内心思ったが流石にそこは自制する。

そんなことをしたらこの街でグダグダSM女王様をやって適当に生きていくという人生の目標が頓挫してしまうからだ。



くるりと踵を返してSM倶楽部に向かう魔吏愛だったが大変なミスをしてしまったことを思い知らされる。


「ヤッベー…鞭で勤務先のビル壊しちまったみてぇ…」


そして上空の戦闘機は魔吏愛の位置を補足し狙いを定めていた。


女王様は完全に油断していた。


人生の目標を失った(完全に自業自得だが)喪失感で一瞬【ヤベェ…】ってなったのだ。


魔吏愛に向かって飛来するミサイル。


魔吏愛の伸び伸び歌舞伎町ライフが今日この時終焉した。







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