モラハラブライド

春沢P

第1話 過去にあったできごと

 幸福な結婚の条件は、間違いようもなく、二人が愛し合っていること。


 そうでないのに、無理に結婚しようとすれば不幸の種が蒔かれる。


 ここに書くのは今から25年以上前、平成も初期の頃の話。その不幸な結婚をギリギリで回避した話だ。

 親の共通の知り合いに紹介され同郷の同年代の異性と出会い、意気投合して結婚しましょうとなった。昔の地方の話なので両方の親と結納式を行い婚約した。6月のこと。ここまでは順調だった。

 1月に式を挙げましょうと決めると、ならば10月には一緒に住むといいと親どうしで話が盛り上がり、我々もそれに反対する理由もなく、暑い8月が過ぎて9月から家を探した。

 10月には新居が決まり、半月後に引っ越し。新郎=自分がまず会社の独身寮を引き払って引っ越した。さて新婦はいつ越してくるのか、というあたりがこの話のスタート。


 新居は西ヶ原の静かな住宅地に見つけた。RC造のアパートの2階。あたりは平屋が多く、2階でも日当たりも眺めもいい。

 引っ越して最初の一週間は順調に新生活の準備が進んだ。何も約束がなくても彼女氏が来て一緒に買い物に行った。料理ができたからと持ってきたこともあった。一週間住んで洗濯ものが溜まったので、家電製品はまず洗濯機を買おうと二人で出かけた。

 まだ二人で暮らすということはなかったけれど、人並みの幸せは味わったと思う。


 しかし突然、彼女氏から「電話しないで」と言われた。

 こちらに何の思い当たることもない。洗濯機を買いに行って、夕方食事に行って、その帰りに突然機嫌が悪くなり、彼女氏は帰ってしまった。

 洗濯機が届いたからと電話をしたら「電話しないで」である。

「???」

 頭の中はこうなった。

 女性から電話をするなと言われたらそれは別れてほしいということだ。無視してしつこく電話をして状況が好転することはない。それぐらいはわきまえている。

 しかし、新居に引っ越したタイミングで婚約者から言われる要望じゃない。


 この話はこういうおかしな事態に続いて起きたこと、考えたことを書く。


 なお、新婦から縁談を断られましたという話ではない。それだったらどんなによかったことか。話はこじれるのである。そして、彼女氏がこういう行動に出た背景を考えると、ぞっとする真相が見え隠れした。

 そういうのを読みたいという方は、どうかおつきあい願いたい。

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