路上喫煙同好会の顔合わせ★★★

 キャンパス近くの歩道橋の下、お行儀良く会長の到着を待つ喫煙者の列に今年唯一の新入生が加わる。彼はヤニ臭い先輩方に一通り挨拶を済ませると、彼らに倣って遠い西空に目を瞑る。退勤ラッシュに耳を慣らし、風を透かして鳥の鳴き声を聞き分ける。二羽のカラスが縺れつついやに高い声で鳴き交わしながら屋根に墜ちる幻を弄ぶ頃、ようやく会長が御出座おでましになる。

「じゃあ順番に火を着けるぞ」

 一個のジッポーライターが手から手へと渡される。マールボロ、メビウス、キャメル。各々が好きな銘柄を吸い出す中、最後尾の新入生はココアシガレットを咥える。これで「一体感」は十分。同調圧力に屈したふりをするのはいつも楽しい。

「長生きしようぜ」

「あと100年は生きたいな」

 型通りの冗談に型通りの応酬がなされると、話題はいつも通り「最期の晩餐の献立」へと移る。ラーメン、寿司、ステーキ、カレーライス。それらを胃に詰められるだけ詰めたい。そう言う彼らの身体は痩せ細っているが、事実に言及するともっとつまらない冗談が返って来るだけなのでやめておこう。

 ところで、「空気を読む」のアナグラムは「虚無を食う」になるそうだ。こういう意味深げな戯言は真面目腐った顔で口にするほど効果が上がる。人を煙に巻く効果が。(そろそろ読者は気付くべきだ、この段落こそがこの文章の肝であり、あなた方が「教訓」を引き出せる唯一の箇所だということに。これ以上読み続けても何も得る所がない。今すぐデバイスの電源を切ろう。女の後ろ姿に満足したなら振り向かれるより先に立ち去らなければならない。作者がキーボードを叩き足りないがために生み出す駄文に目を通せるほど暇ではないはずだ)。

 通行人からガンを飛ばされる頻度が高くなってくると、彼らは近くのコンビニかパチ屋までぞろぞろと避難する。「初めての飲酒で死ぬ奴はいるけど、喫煙では死人が出ない」と聞えよがしに言ってみるも、風向きは良くならない。そこで彼らは今年度の活動内容に新たな項目を加えることにした。すなわち、近隣の保育園が行うお散歩兼ゴミ拾いのルートに沿って吸殻を落とす活動を新たに加えたということだ。これは、園児たちの楽しみを増やしてやりたいという彼らなりの心遣いである。

「『地域貢献』という言葉の意味はよくわからないけど、たぶん我々のやろうとしていることもその内だろう」

 同好会メンバーの薄暗い心に誇りが一つ灯されたところで今度の会はお開きとなった。

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