第181話
※体調が悪くて更新が遅れてしまいましたm(__)m
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俺は今、車での移動時間を利用して音楽動画を何度も確認していた。
シャイニングボーイズの『元気120%』に、他今人気がある応援ソング、管田真貴(かんだまき)の『見たこともない風景』、オフィスあげあげ団リズムの『宿題』に、サボテンマイスターの『出来内さんは君じゃない』、に俺たち武装女子の新曲『あきらめないで』。
この5曲が今日の収録で歌ってほしいと依頼されている曲なのだ。
ちなみに俺たち武装女子の新曲はサイキックスポーツのイメージソングとして使ってもらおうと作った曲で、作詞作曲はつくね。あきらめ折れそうな心に火をつけてくれるような、頑張ろうって思わせてくれる、とてもいい曲だ。
いつの間にか中山さんが交渉してくれていて正式にサイキックスポーツのイメージソングして採用されていたんだけどね。中山さんって、すごいことを何でもないように、サラッとやっちゃってるから時々驚かされるんだよ。
中山さんはタイミングが良かったって言っていたけど、その時はたしか、サイコロをサイキックスポーツの特殊枠で申請していた時期で、Pリーグに参入すると表明した企業が出てきていた時期なんだよね。
不思議に思いつつも、参入する企業がどんどん増えて2部リーグとかできたらいいな、とか思っていたっけ。
——そういえば肥田先輩は頑張ってるかな……
肥田先輩の所属するチームはPリーグでも下のほうだったはず。そろそろサイキックスポーツ選手への突撃インタビュー番組が始まるらしいからもしかしたら逢えるかも……
——おっと、シャイニングボーイズの元気120%は完璧に覚えておかないと……
その『元気120%』だけが一緒に歌うことになっていて、ご丁寧に俺のスケートボードも準備しているってことだから、彼らの動き(スケートボード)は完璧に把握しておきたい。
——『そうさ〜♪』
ネッチューブに上がっている彼らの動画を何度も再生しているが、この曲も、とてもいい曲だね。覚えるとつい口ずさんでしまう。
「なかなか乗り心地はいいねぇ」
「大きいからかな?」
俺の前に座っているのはさちことつくねの声が聞こえる。とても楽しそうだけど、2人は移動で使っているこの車のことを話しているだろう。
この車は会社『武装女子会』の車で、ロケ用にと買ったばかりの新車なんだ。
10人乗りで普通免許でも乗れるから秋内さんはいい車を選んだと思う。
ちなみに保護官は大型免許の取得が必須となっていて、保護官のミルさんは当然ながら大型免許を取得している。
しかし、大型車だと運転できる人がミルさんだけになってしまうので今のところ購入する予定はない。
「そうかもしれないね」」
「うん」
つくねとさちこの話にさおりとななこも加わりさらに会話が弾んでいるっぽい。
この車の座席は前から2(運転席、助手席)に後部座席が2、3、3とある。
さおりとななこは2つある座席をくるりと回して、後ろ席に座るつくねとさちこと向かい合わせになるように座っている。
これも会社の売り上げが順調で、秋内さんが営業車兼ロケ車の購入を提案してくれたからなんだよね。
音楽以外、会社の運営はほとんど秋内さん任せになっているみたい。
誰も教えてくれないけど、俺が帰った後も、秋内さん率いる販売グループは遅くまで残って仕事をしているっぽいんだよね。
みんな時々、目の下に隈を作って登校してきたりするからすぐに分かる。
マンガを遅くまで読んでいたって誤魔化されるけど、ミルさんはお見通しで、こっそり教えてくれたんだよね。
でも本当に会社『武装女子会』が大好きみたいで、やり甲斐を感じているっぽい(ミルさん情報)ので、リラクセーションとヒーリングをこっそり使ってあげるだけにとどめているんだ。
おかげでリラクセーションとヒーリングの扱いも手慣れたものになっている。念力漏れは相変わらずだけどね。
「ところでみんな、アノ件はどうする?」
「私はいいと思う」
「私もいいと思うけど……でも苦情がこないか心配」
「だよね」
さおりたちが話しているアレとはファンクラブのことだ。
大手芸能事務所と違って俺たちの会社は小さい。大したサービスはできないだろうと有料の会員募集はしていなかったが、作ってほしいという声が絶えないので、みんなで議論しているのだ。
「なんかファンのことを武活で、なんて意見も……」
「会員にはカードとかも……」
「グッズ商品の割引なんかで……」
「有料会員様限定動画なんかは……」
「小冊子を送ったりも……」
秋内さんがいないけど、意見を出し合いみんな楽しそう。
俺? 俺はみんなが決めたらそれに従うと伝えているよ。俺は役員でも管理職でもないからね(男はなれない)。
——なっ///。も、もうしばらくはこのままなんだろうか……
なぜ俺が必死に別のことを考えていたのかというと。
「香織先輩、今動きましたね」
「分かった?」
「はい。聞いていたとおり、女の子は元気がいいのですね」
「うーん。男の子がどんな感じなのか分からないけど、この子はとても元気よ」
俺を間に挟んで香織と新山先生が楽しそうに話している。自分のお腹を優しく撫でる香織と、香織のお腹に優しく触れている新山先生。
そうそう、香織の第一子は女の子の予定なんだ。実家(野原家)にも伝えたら、その日、香織の実家ではお祭り騒ぎだったとかなんとか。名前はお婆様が付けてくれるらしいので、楽しみにしている。
「そうですよね。あ、また動きましたね。元気があってかわいいですね」
「ふふ」
新山先生、シートベルトはしてるけど、香織の方に身を乗り出す形で手を伸ばしているから、新山先生のお胸とか身体とか色々俺の腕に当たっているから気にしないようにするのに必死なんだ。あと顔も近い。
それは香織もだけど、香織は俺の妻なので、いいとして、というか香織は俺の腕に自分の手を絡めたり触ったり楽しんでいるね。いいんだけど。はい、ヒーリング。
1時間に一回は休憩をとるようにしているけどヒーリングも忘れない。もちろん運転しているミルさんや中山さんにも。
「タケトくん?」
新山先生には気を使うな。胸元が少し開いているから気をつけないと見えちゃうし、ってあれ、さっき新山先生、香織のこと野原先輩じゃなくて、香織先輩って言ってなかった?
「……え、あ、はい?」
「タケトくん? もしかして邪魔になってますか?」
「いえ、大丈夫ですよ」
香織のお腹に触れたり会話を楽しんでいる新山先生に、近いからもう少し離れて、と言って水を差すのも悪い気がしたんだけど、前世の俺のままだったら絶対勘違いしている距離なんだよな。
新山先生には色々とお世話になっているし、嫌われたくないから気をつけないと。
——しかし、うーん。やっぱりやわら……違う。気のせい、でもないけど、なんでもない。
シャイニングボーイズの動きはすぐに覚えたが、その後も、楽しそうな2人の邪魔をしないようにイヤホンを使いシャイニングボーイズの動きを覚えるフリを続けてたよ。
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