第134話 シャイニングボーイズ相輝視点
『シャイニングボーイズ』は長身で優れた容姿の男性4人組のグループ。そのグループリーダーをする僕は相輝(あいき)。本名は南条相(なんじょうあい)。歳は17。
メンバーは幼い頃から一緒に育った、南条海(なんじょうかい)に、南条彩(なんじょうさい)、南条大(なんじょうだい)の3人だ。
南条家九之組の中でも特に落ちこぼれだと言われていた僕たちが新たに新設された『かじゅう組』に入れただけでも奇跡だと思っていたのに、その中でも1番にメディアデビューすることが決まってしまった。とても誇らしい。
『かじゅう組』が新設された理由は何も知らされていない。男は黙って女に従い尽くす存在。僕たち男性には必要のない話は伝えられないのだ。
まあ無理に知ろうとすれば折檻室に連れていかれる。あそこは恐ろしい場所だ、2度と行きたくない。
ただ、少し気になるのは先輩たちの反応。僕たちに先を越されて悔しいはずなのに、鼻で笑うかのあの態度。強がりだと思いたいが、不安は残る。
理由はすぐに分かった。スケートボードだ。これを自在に操りながら歌うのだと。今までにないインパクトを与えて一気にトップアイドルに上り詰めるそうだ。
そこまで僕たちのことを考えてくれていた事に驚くが、いや、南条家のため。それだけか……
しかも、完璧に覚えろと指示されている曲は5曲もある。覚えれなければグループから即脱退。デビューまで時間がないのに無理に決まってる。
念力切れで何度も倒れた。きつい、ツライ。
決められたスケジュールはかなりハードなものだった。でもそれは僕だけじゃない。他のメンバーも同じだと思い、気合いだけでレッスンに励む日々。少しずつできることが増えていなければ心が折れていただろう。
ちなみに、僕たちは同じ南条の姓を名乗っているが別に兄弟ではない。
僕たちの名前は幼い頃に南条家の方から名付けられ、成人すると同時に課せられた試練に耐え乗り越えることで、南条の姓を名乗ることができる。
それが成人した証となり、大変名誉なことなのだが、その分、夜の仕事が増えてツラくもあるが。
「みんな、僕は相輝(あいき)って言うんだ、よろしくね」
僕は爽やかな笑顔を作りカメラに向かってウィンクをしてみせる。そうだ、これでいい。何度もやったこと。完璧だ。
「俺は海輝(かいき)だ。よろしくな」
日焼けした肌で長髪の似合うかいきは自身に親指を向けて笑顔を作る。かいきは見た目は俺様系だが、それは演技で実は小心者。おっと、不安だからってこっちを見るなよ。
「やっとみんなに会えたよ。俺っち彩輝(さいき)だよ。よろしくぅっ!」
両手を大きく広げで人好きのする笑顔を浮かべているのが童顔のさいき。実は私生活はだらしなく言葉遣いも悪かったりする。さいきに喋らせるとボロが出そうでヒヤヒヤだな。
「大輝(たいき)だ。よろしく」
目つきが鋭く口数の少ないたいきは、クールな見た目に反して実はお調子者だ。気をつけないと口元がニヤついていて気持ちが悪いぞ。
そんな僕たちは今、スケートボードに乗ってステージ上を駆け回る。
デビューが決まってから毎日のように乗っては倒れ、アザを作り、動けなくなるまで練習した思いが一気に溢れ出して思わず涙が出そうになって危なかったが、スケートボードを回転させてどうにか誤魔化す。
ふぅ……
ただ走らせるだけでなく音楽に合わせて歌わないといけないから大変だ。
あれほど練習したにもかかわらず、少しでも気を抜けばどちらかが疎かになりそうになってしまう。まだまだ練習が足りないってことか。くそっ。
完璧を求められる南条家の人間としてそんなことはあってはならない。あればすぐに折檻室だ、正直怖い。
僕たちは念力を使い次々と飛び上がり宙を舞う。横回転や縦回転を披露すれば会場からの面白いように反響があり気分がいい。やってきてよかった。
僕たちは念動レベル5以上はないと形にできないことをしているから当たり前か。そう、僕たちはこれでも念動レベルは5なのさ。男性ではほとんどいないと聞いているし、実際、僕たち以外には見たことない。
ただ、それ以外(特殊念能力含む)は標準レベル以下で念力量も少なかったから落ちこぼれなんだけど……
最後は念力量が足りなくなるのでアクロバティックな動きを絡めて誤魔化し僕たちの初仕事は終わりとなる。
はあはあ、念力量がやばい。気を抜くと今にも意識が飛びそうになるが、すごい拍手に驚き飛びそうだった意識を持ち直す。
こんなにも喜んでもらえると思っていなかったから驚いたのだ。そのおかげで助かったのだが。
「突然の乱入演出から始まりましたが、カッコよかったですね……テレビの前のみなさん、どうでしたか? カッコよかったですよね……」
実はこの番組、新春恒例の生放送番組『新春! 明けて魅せたい得意芸』での出来事。人気のあるアイドルや芸人、歌手やスポーツ選手などが出演し自分の得意芸を披露してくれるバラエティ番組で歌番組ではない。
バラエティー番組だからこそ乱入という演出でデビューを飾れたようたけど。
MCの女性が場を繋いでくれている間に僕たちはMCの元に駆け寄る。ここは素早く動けと指示されているので駆け足だ。念力量が少なくなっているからだろう。かなり身体はツライが必死に脚を動かす。
「えっと……あ、ゆっくりで大丈夫ですよ。はい……そうですか。彼らは『シャイニングボーイズ』の皆さんのようですね」
MCの女性は僕たちの乱入など知らなかったという体で進行していく。
MCアシスタントから紙切れを渡されて初めて知りましたというような演技を絡めてカメラを向く。
ここまでは打ち合わせ通り。あとは、ここで笑顔を振り撒きながら、MCの女性からインタビューを受ければいいだけだ。
「皆さん初めまして、僕たちは『シャイニングボーイズ』といいます」
初めてカメラ(生放送)の前に立つが、MCの女性がにっこにこの満面の笑みを浮かべて話してくれるのでとても話しやすくてとても助かる。
そういえば、南条家ではこんなふうに笑顔を向けられることはなかったっけ。
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