第75話 (面堂未留視点)

 私は面堂未留、26歳。


 物心つく前から施設にいた私、その理由は少し大きくなるとすぐに分かった。私は左右の眼の色が違う(黒と赤)のだ。


 他の施設の子からも不気味だと避けられるくらいだからきっと捨てられたのだろう。


 そして、その眼の色の違いも能力検査をすることで分かった。私には念眼(オーラ)という珍しい能力があり他人の感情を色で捉えることができる。


 片目に現れる方が両目よりも資質が高いらしく実際に私の念眼の資質は10であった。

 しかも、能力を意識したことで念眼が開花してその日から人の感情が色で分かるようになってしまった。


 しかし。これは見えても気分がいいものではなかった。余計に不気味だとみんなから距離を取られた。

 だから私は必死に制御することを覚え、自分の意思で使用できるようにした。


 それからは念能力の資質が高いからと施設の先生たちから男性保護官を目指した方がいいと勧められてそうすることに決めた。


 理由はすごく単純なもので、施設の中(同年代)では、私には友だちと呼べる人がいなくていつも優しくしてくれる先生たちの側にいたから。


 伊達メガネも眼の色を気にする私に優しい先生がくれたもの。念能力による眼の色の変化はカラーコンタクトをしても隠せないから。しかも、この伊達メガネ(まだ薄い)はハーフミラータイプのもので私からは見えるが相手からは見ないタイプのものだった。すごく嬉しかった。


 男性保護官は女性の憧れの職業の一つらしいけど、私にはどうでもよかった。ただそれを目指すと言えば先生が喜んでくれたから。


 小学校を卒業すると私は男性保護官養成中高校(中高一貫校)に進学した。


 半分以上が脱落するほどの厳しい訓練が6年続きましたが私は首席で卒業しました。


 友だちと呼べる存在がいない私は暇さえあれば本を読み、普通に授業に打ち込んでいただけなのになぜか首席。次席の何某さんからすごく睨まれてとても面倒だった……


 ただ一度だけありました実践学習時にメガネを男性から取られるという事があり、眼の色の違いを見て気持ち悪いからあっち行け、と恐怖を与えてしまいました。


 ショックでした。自信を無くしそうになりましたが結局はどの仕事についたとしても私の眼の色が変わる訳ではありません。優しかった先生、今でもたまに手紙をくれますけど保護官を目指すことをやめたと言ったらきっと悲しむだろう。


 ならば同じことが起きないようにすればいいのではないか。


 そして今回の場合は女性として興味をもたれたからだろうと思う。冷静に考えてみれば挨拶の時からあの男性は私の顔や身体、特にお胸を注視していました。


 ではどうするか、あまりいい案が思い浮かばずとりあえず分厚いメガネに変えてみました。これだけでも印象がかなり悪くなったと思いますが、男性との接点がないのでこれ以上はどうしようもありません。次への課題とします。


「やった卒業だ」

「だね」


 卒業の日は、男性と接点の多い男性保護官。厳しい訓練を潜り抜けた者のご褒美だと、皆は喜び涙を流しながら抱き合ってました。


 私はただ先生が勧めてくれたこの仕事がしたいだけ。好きどうかはまだ分からないので、その輪に混ざることなく帰宅しました。


 4月に入り就職先に向かう。就職先は西条グループ傘下のマイセキュリティという会社でした。


 はじめは先輩方の後方で3ヶ月ほど学び、それから2年半は先輩方の休暇時の交代要員として色々な男性の保護につきました。


 分厚いメガネの効果は思ってた以上にあり、私と対面した男性は決まって眉間にシワを寄せた。


 社会人になって使い始めた念眼、その念眼を使って確認すればその時の男性の感情は黒色で嫌悪を示す。


 でもそれでいいのです。ほとんどの男性が傲慢で女性を見下した態度をとると学校で習っていましたが、実際にその通りでしたのでそんな男性などから好かれようとは少しも思えませんでしたから。


 ただ仕事を全うするのみです。家政婦のような仕事も割と自分に合っていたので楽しいのです。


 ただ私を視界に入れてわざわざ嫌な気持ちにさせるのは忍びないので、極力気配を消すように努めました。

 自分でもかなり上手くなったと思った頃、私は初めて保護対象者を持つことになりました。

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