第102話 『 久々のボッチメシと突然の試練? 』

「たっはー。食った食った。久しぶりのボッチのメシはサイコーだな!」

「ふふ。お粗末様でした」


 ぽこっと膨れたお腹を撫でるアマガミさん。そんな姿を見て微笑みを浮かべる僕。

 それから食後のコーヒーを飲みつつ、


「少し休んだらアマガミさんが使う部屋の掃除しようか」

「マジで部屋使っていいのかよ」

「言ったでしょ。遠慮はなし。例え居候でもこの家の住居人に変わりはないんだから、ちゃんと部屋も用意させてもらいます」

「あたしボッチの部屋で十分なんだけどなー」

「そしたら僕の部屋じゃなくなっちゃうでしょ。べつに暇な時はいくらでも居てくれて構わないけど、着替える時はせめて自分の部屋でお願いします」

「あ、当たり前だろ! ボッチの変態! エッチ!」

「うんうん。やっぱアマガミさんはこうでなくっちゃ」

「罵倒されて喜んでやがる⁉」


 何か盛大に勘違いしているアマガミさんに嘆息しつつ、僕は会話を続ける。


「アマガミさん。夏休みはずっとバイト続きだったんでしょ。残りの数日はゆっくりしなよ」

「ん。ならお言葉に甘えて少しゆっくりすっかな。あー。マジでこの家に住めるとか幸せすぎる。快適だし、何よりボッチがいるし」

「僕の家なんだから僕が居るのは当たり前だよ。それに、僕のほうこそアマガミさんと一緒に暮らせるなんて夢みたいだ! やっと桃鉄99年できるね!」

「まだ諦めてなかったのかよそれ⁉ 言っとくけどぜってぇやらねえからな。まぁ、ゲームで遊ぶのは願ったり叶ったりだけどな」

「じゃあ、今日から二人でゲーム三昧だね」

「……あれだな。あたしよりボッチの方がこの生活楽しんでるな」

「みたいじゃなくて楽しんでるんだよ。友達と共同生活ってなんかわくわくしない? 修学旅行とか民間合宿の延長戦みたいでさ!」


 そんな生活が毎日続くとか、はっきり言って僕得過ぎる。しかも相手はアマガミさん。これほど最高で幸せなことはない。

 はしゃぐ僕を見て、アマガミさんは「子どもかよ」と苦笑を浮かべながら、


「なんつーか、色々と不安だったけどさ、いつも通りのボッチ見たら全部どうでもよく思えてきたわ」

「それは褒められてるのかな?」

「ちょー褒めてる」


 なら、いいか。

 アマガミさんが少しでも安心してくれているなら、僕がそれ以上を望むことはない。

 今はただ、彼女に安寧を与えたい。


「よし。それじゃあ少し休憩したら空き部屋の掃除して、夕方は買い出しに行こうか」

「おう。住む以上、働かざる者食うべからずだ。掃除とかはあたしに任せろ。これでも婆ちゃんに掃除が上手いって何度も褒められてんだ。自信はあるぞ。でもその代わり、メシはとびきり美味いものを頼む」

「了解しました。アマガミさんの舌をうならせられるよう、鋭意努力していきます」

「うおっしゃ。なら俄然やる気出てきた! いっちょ張り切ってやってやらぁ!」

「おー!」


 天井に向かって拳を突き立てるアマガミさんに続くように、僕も拳を突きあげる。

 こうして僕らは部屋の掃除に――


「……あっと、その前に。アマガミさん」

「んあ? なんだボッチ?」

「今から、ちょっとお母さんと電話してくれる?」

「――ひょえ?」


 微笑みながらそう言った僕に、アマガミさんはそんな素っ頓狂な声を上げるのだった。

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