私の心は白で表す事ができる。

霜花 桔梗

第1話 白の世界

 私は高校二年のごく普通の美術部員だ。次の目標の描く題材は裸婦像である。学校の掲示板にモデル募集の貼紙をしていた。


 そう、美術部の経費で落ちるので一般から募集できるのだ。私の心は白である。この白に満ちた心は何も要らない。これからも友達も恋人も必要ない。それが私の全てであった。


 このモデルの募集が私を変える事になるのであった。


 朝の微睡の中で白の世界に浸かっていた。アラームが鳴り起きる時間が今日もきた。白い世界の終わりだ。私は朝食を食べることなく。ブレザーの制服に着替える。

家を出るとバス停に向かう。ホームルームの前に美術部に寄りたいので、早めのバスに乗る。


 そして、美術部の前まで着くと。一人の女子が立っていた。それは小顔で美人と言える。体格は全体的に小さく一年生のようだ。


「あ、あ、モデルの募集を見たのですが……」

「了解した、部室の中に入ってくれ」


 私は部長席に座るとゲスト用のパイプ椅子を用意する。


「モデルの仕事は簡単、裸婦像を描く為に女性の裸を一枚、写真を撮るだけだ」

「写真を撮るだけでこのバイト代ですか?」

「あぁ、不満か?」

「その逆です、こんなにもいただけません」


 ふーう、確かにこのバイト代ではやましい事がある値段だ。


「では、こうしよう、制服姿のモデルになるので良いか?」

「はい、よろしくお願いします」


 その言葉に私は少しキュンとした。裸婦像の写真より、この可憐な少女がモデルになってくれることが素直に嬉しかったからだ。


 そして、お互いに自己紹介をする。


「私の名前は星野美琴です」

「あぁ、美術部の杉山みゆきだ」


 私は今日、会ったばかりのはずの星野に、前世の昔から繋がっている気分でいた。


 放課後、私は美術部に向かう。美術部の在籍生徒は何人かいるが、皆、幽霊部員だ。結果、私が一人で部を使っている。校舎裏の部室棟は林に覆わられている。最近は少子化のせいか活動していない部室が多く見かけられる。私が美術部の前までたどり着くと星野が待っていた。


 照れくさそうしている星野は輝いていた。その瞳はどんな真実も見通している様だ。私達は部室に入ると。太陽の光が差し込む場所にパイプ椅子を置き星野を横向きに座らせる。


 題名は『光差す一瞬』しよう。


 私はラフをキャンバスに向かい描き始める。そうだ、音楽をかけよう。私はスマホを取り出すと音楽が流れ始める。切ないラブソングがかかると星野は、頬を赤くして胸に手をやり苦しそうにしている。きっと、星野は切ない恋をしているのだろう。


 一時間ほど静かな部活に音楽だけが流れていると。


「ふ~う、今日はこれくらいにしょう」

「明日もモデルにしてくれますか?」

「あぁ、歓迎する」

「ありがとうございます、これで私の恋も一歩前進です」

「恋?」

「この想いは叶うと……」


 微妙な所で星野の言葉が詰まる。まるで私のことが好きみたいな言い回しだ。一瞬の間の後、星野は凛とした瞳で「はい、私は負けません」と言う。


 その後、直ぐに星野は走って行ってしまたった。星野がいなくなると私は心が白く染まっていく気分がする。


 これが『寂しい』と言う感情なのかもしれない。


 翌朝、私はまた、白い世界から目覚める。昨日、星野に会って気付いたことが白い世界は寂しさの象徴であることだ。誰とも交わらない直線が初めて星野と言う曲線に交わったのだ。不意に右手を見ると、真っ白く感じる。これが具現化した白さなのかと冷静に思う。


 もう一度、右手を見ると華奢な手であるが普通の白さだ。それは私の存在が白であることを表していた。つまり、白は孤独に等しい事を感じた。


 起きるか……。


 私は制服のブレザーに着替えると朝食を食べずに家を出る。決まった日常の始まりである。そして、ホームルーム前に美術部に向かうと。昨日の描きかけのキャンバスが置いてある。星野の横顔が自分でも美しいと思った。今時、長時間のモデルを使うことは贅沢である。


 私はこの絵を完成させるのが怖くなった。星野との関係が終わってしまうからだ。

イヤ、交わった交点はもう存在する。私的な連絡を取り合えばいい。私の白を色付けしてくれるのは星野だけだ。


 ……。


 時間だ、教室に向かおう。部室に鍵をかけて部室棟を後にする。


 その夜、今日の放課後の事を思い出すと心が熱くなる。星野は放課後に、また、美術室に来てくれた。


 『光差す一瞬』は星野の色で完成に近づいた。


 この『光差す一瞬』は制服姿の星野の横顔である。


 ダメだ、考えることは星野の事ばかりだ。少し冷静になろう。


 私はシャワーを浴びることにした。服を脱ぎ、シャワーを浴びる。


 ふと、下を見ると女性らしいバストが目にとまる。いつの間にこんな体になったのだ?バストに手を伸ばすと柔らかく感じる。体は女性なのに星野の事を求めている。


 私はシャワーの温度を上げて心の熱さを隠そうとする。お風呂上りに自室に戻るとベッドにダイブする。


 寂しい……。


 火照った体は星野を求めていた。気がつくと眠りに落ちていた。白の世界から夜中に目が覚める。私はやはり白の世界の住人だ。何もかも忘れて寝ていたい。


 朝、白が終わる時間だ。今朝は久しぶりにアラームが鳴るまで寝ていた。今日の始まりは、けだるいモノであった。


 久しぶりついでだ、私はカロリーメイトを一つ食べる。これも数カ月ぶりの朝食だ。ふ~、カロリーメイトは水が欲しくなるな。私はキッチンに行き水を一杯飲む。


 そして、日常の時間に家を出る。


 バス停に着きそれからバスに乗ると、昨日買った文庫本を取り出す。いわゆる、お仕事小説なる分野だ。バスの中で文庫本相手に普通に時間を潰す。学校に着く頃には眠くなっていた。


 そして、美術部に向かい昨日の放課後に描いたキャンバスを確認する。星野……私は星野の履歴書を見る。そこには携帯番号が書かれていた。繋がっていたいと思い、息を呑むとスマホに携帯番号を入れていた。


 罪な恋の予感は現実になっていた。早く放課後に成らないかな、私は星野と言う存在を求めていた。そんな想いをいだきながら美術部のソファーに座る。


 不意に眠気に襲われて眠りにつく。気がつくと二限の終わり頃であった。最近は白い世界が負担になっているのかもしれない。簡単に要約すると、質のいい睡眠がとれないのだ。結局、お昼までこのソファーで寝る事にした。星野に会いたいと想いながら眠りにつく。


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