或る悪党の一生

大塚

この世の外へ。

祝福を知らずに落ちた子どもです母の目鼻は黒く塗られて


バタフライナイフがともだちだった頃腕には青あざ星座のように


どこまでも明るく見えた夜の街行き交う人は皆サイボーグ


戻らない私を詰るひとの声「母さんのこと愛してないの?」


桃色のランジェリー身に着けたひと撲られ蹴られ微笑むオンナ


目の前に裸の死体転がしてぼくは私を守っただけだ


闇夜からぬるりといづる「父」の手を取りあぐねてた17の夏


母さんと間男こいびとの骨海に捨て私はあいつの飼い犬になる


息詰まる雪降り積もる北の街首吊り縄提げ漫然と生く


「あんたはさ、そのままでいろよ綺麗だし。いやほんとだよすっげえ綺麗」


いつ川を渡っても良い人生に突風が吹き炎が生まれ


「死ぬ時は南の島に行こうぜなあ」泳げないって言ってるだろバカ


母殺しいづれは父も殺すだろうそれでも俺を選ぶというのか


「世界中全部が醜く見えたってあんたはずっと綺麗じゃないか」


両腕に抱えきれないほどの訃報骨も喰えずに黙って泣いた


「もう行こうこんな澱んだ世界にはあんたは勿体無いよ綺麗だ」


不完全、穢れたままで生きていた、父さん、父さん、初めて呼んだね


「この愛じゃまだ足りないか手を取ってこの世の外に連れてってやる」


降り頻る雪、雪が降る、美しい。さらばともだち、また会いましょう。


「──あの人の死んだ理由が知りたいな。俺の大事な相棒ともだちだった。」

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