力ある男は売られたけんかを全部買う。
@belbera
第1話
ある天気のいい日、いつものように僕は幼馴染のレリアと遊んでいた。
「今日は何する!?」
「おままごと!」
朝から日が暮れるまでずっとおままごとをやった昨日のことが思い出される。
結構きつかったし、最後の方にあったふりん?とか浮気?はよくわからなかったけど……。
「え~昨日やったじゃん!」
「でも、好きなんだもん……」
目が少し涙ぐんでいるのを見て、僕は仕方なしにおままごとを始めようとしたらどこかからか声が聞こえた。
「ふん、だせえな」
「な~」
声が聞こえる方をちらっと見ると、遠目からいつも僕たちのことを眺めている奴らがレリアと僕のことをじっと見ていた。
「ね~え、やろうよ…おままごと」
「え、あうん。わかったから……」
「ほんと!!」
僕がそう言った瞬間、急に顔が、ぱあっと明るくなるレリアに騙されたような気がするけど昨日の続きからおままごとを始めた。
僕が奥さんのレリアの待つ家(仮)に入ろうとすると頭の後ろに強い痛みが走った。
「いった!!」
「あははは!当たった当たった」
痛みの後にころっと足元に転がった石を見て痛みの正体がわかってとてもイラっとしたけど、ふと父さんの言葉を思い返した。
『ライ、自分のために怒ることはね恥ずかしいことだよ?』それは前に僕があいつらのことを殴ったときにあいつらの家に謝りに行く道の途中で言われたことだった。
「……気にしちゃダメだよね」
そういって目の前にいるレリアに話しかけようとすると、ヒュッという風を切る音とともに僕の顔の横を通り過ぎた石がレリアの手に当たった。
「いたい~。うう、ぇ~ん!!」
赤くなった手を抑えて泣くレリアの姿を見て僕は自分があてられたときとは比にならないほどイラっとした。
「うわ~外した~」
「次、俺~」
『やってやる!やってやる!……あいつらをひどい目にあわしてやる』
そう思って湧き出てくる力をもってあいつらの方へ走り出した瞬間、僕の前にさっきまではいなかった三角帽子に長いローブを着た綺麗な女の人が立っていた。
「それは危険な力だよ。少年」
次の瞬間、そのローブに包まれた僕の体はさっきまでいた町のなかじゃなくて巨大な森の中にいて、さっきまであった体の奥から出てくる力はなくなって黒い気持ちもなくなってた。
「……ここ、どこ?」
「ヴェール大森林。不可侵領域の一つにも数えられる場所さ」
僕の独りごとに答えてくれたくれたのはさっきの女の人だった。
その人を見た瞬間、僕の頭にレリアのことが思い浮かんですぐに行かないといけないという気持ちが溢れてくる。
けど周りを見ても、あるのは大きな木と一軒の家がポツンとあるだけでどうやって帰るかなんて全く分からなかった。
その中で唯一帰る希望のあるその魔法使いのお姉さんに『返して』と言おうとしたらお姉さんが僕より先に口を開いた。
「先に言っておこう。君を返しはしないよ?」
そういわれて、『知らないところで独り』というのが僕の中で強くなって不安がとても大きくなる。
「なんで?勝手につれてきたのはお姉さんでしょ?返してくれるくらいいいじゃん!」
僕の言葉を聞いて、お姉さんは『はぁ~』と大きくため息をこぼして一言言った。
「君、あのままだとあの子たち殺してたよね?」
「殺すなんて……」
本当に殺すなんて思ってなかったし、もちろんひどい目にあわせようとはしたけど本当にそれだけだった。
「いいや、殺してたね。あんな魔力をまとった腕で殴られて生きてるわけないでしょ」
お姉さんはわかりきったことを言うようにそうつぶやいて、続けるように何かを言い始めた。
「まあいいや、そんなこと。女の子に傷つけたやつは殺されても文句は言えないしね」
「さて、本題だ。私は善人じゃない。まあ誘拐してるわけだし?だが、もしあの町に君が無理にでも帰ろうとするなら、私はいずれ悪となる君をここで殺そう」
さっきまでのふざけたような感じじゃなく、真剣な目と声色で言う『殺す』は遊びで言う『殺す』とは全く違う言葉だった。
「大事な人を守ろうとしただけで僕は殺されるの?」
無茶苦茶だった。レリアが傷ついて、それに怒ったら殺される。僕は意味が分からなくて、お姉さんに向かって走ろうとしたけど一歩、二歩進んだ時に体がピタッと動かなくなった。
「話は最後まで聞くものだよ、少年。帰ろうとするなら、と言ったろ?ここで力の扱い方を覚えたなら、いつか君を君を返してあげよう」
お姉さんは少し笑って僕にそういった。
体はまだ全然動かないけど不思議と冷静に僕は答えた。
「力の扱い?」
「そう。君の腕にあったアレね?」
「……それで僕はレリアのところに帰れるの?」
「そうだね」
「それで僕は大切な人を守れるの?」
「もちろん、それは絶対だ」
「なら、僕の答えは決まったよ」
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更新は気が向いたときにするのでたまに見に来てもらえると嬉しいです。
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