魔法使いギルド

第36話 ようこそ魔法使いさん

「魔法使いギルド、アリストン魔法学校前支店にようこそ!」とギルドの受付嬢がハツラツとした態度で4人に言った「それでは4人のギルドへの登録を行いますね。学校側から学生の情報が来てるから登録はスムーズに済みます」

 この場所には大勢の魔法使いとギルドの職員たちが慌ただしく動いていた。ケイトに連れられてハルト、ログ、マリー、レミリアは古びた木造建築のギルドのカウンターの前に立って説明を聞いた。


「まずギルドの成り立ちから説明するわね。魔法使いギルドは英雄アリストンが一般の人々に魔法使いに仕事を依頼できるように設立されたの、原則として魔法使いは魔法使いギルドを介してしか仕事をすることはできない。魔法使いは自由に仕事を行うことはできないの、当然知ってると思うけどアリストンの掟があるからね」

「アリストンの掟?」とハルトが反応した。

「ははっ近頃の学生さんはちゃんと勉強してるのかな?」と笑顔で受付嬢が言った。

「いや、こいつは魔法使いの家系でないメディオケだから」そうログが言った。

「うるさい」

「ギルドでは市民からの依頼は原則なんでも募ってるけど、受けるかどうかは魔法使いの自由、条件だとか場所、時間的なもので依頼が受注されないこともあるわ。まあお客さんには適正な金額の案内もギルドでしているんだけどね。けどギルドで受け付けることができない依頼もあるわ。アリストンの掟にあるとおり『魔法使いは国家に与してはならない』この掟の大原則があるから、例え国家間の戦争に関する依頼だとか、公共事業なんかも受けることはできないわ。だから魔法で敵国の兵士を倒してとかもってのほか! それに戦争で傷を負った兵士を治療することだって禁止されてるわ。残念だけどその兵士が回復すればまた戦争へいって戦争が激化することになるからね。魔法使いはどちらの国にも肩入れしないし、どの国にも属さない、独立した存在なの。言っておくけどもしあなた達が依頼を受けずに兵士を治療なんかしたら厳罰になるからね。でも例えば緊急で治療が必要だった場合だとか強盗を退治したとかの場合はちゃんと当事者を連れてギルドへ報告することね。あとから料金を徴収して魔法使いに報酬を払うから。まあこういうことがあるから魔法使いへの依頼はギルドが精査して魔法使いに提供されることになる」


「どんな依頼が多いんですか?」そうレミリアが質問した。

「依頼は色々な種類があるけど病気の治療だったり、人探しとか魔物の討伐とか珍しいのは造園の作成なんかもあるわ。薬草の知識があればその収集とか、けど主に商人の護衛の依頼が多いわね」

「護衛?」とハルトが反応した

「そう町と町を行き来する商人が山賊や盗賊なんかに襲われないように荷物の護衛のために魔法使いを雇うのよ。もちろん何にも起きないことも多いわ。何も起きなくても依頼料は支払われるから安心して。これでギルドへの登録は完了したわ。これであなた達もブロンズ級の魔法使いね」

「ブロンズ級って?」とハルトが質問した。

「魔法使いには階級があるわ。基本的にはブロンズ級、シルバー級、ゴールド級に分かれているわ。ギルドの依頼をこなしていれば自然と上がるようになるわ。依頼によってはゴールド級希望だとか依頼者が指定していることがあるわ。それと君たちにはまだ関係がないけど魔法使いの最高位に位置するのがプラチナ級の魔法使いね。魔法協会の重職はすべてプラチナ級が就くことになってるのね。例えば君たちの学校の校長も魔法協会会長が任命したプラチナ級の魔法使いがなってるわ。その他にもギルドマスターもプラチナ級の役職ね。魔法協会会長もプラチナ級たち全員の投票で選ばれるわ。プラチナ級はギルドの依頼をすればいいってもんじゃなくて協会への貢献度とかそういうのも考慮されてプラチナ級が集まって毎年一人だけが承認されるわ、プラチナ級は協会の運営に関わる重大な魔法使いだからなれる人は少ないわ。私からの説明は以上ね。今から依頼を受けることができるわ。魔法使いというのはギルドの依頼をこなす者、つまり今から君たちは正式な魔法使いということになるわ。ようこそ魔法使いさん」

 4人は固唾をのんだ。


「今日は魔法使いの仕事というのを体験させてやろうと思っただけだ。依頼を受けるのは私でその手伝いにお前達がついてくるんだ」そうケイトが言った。

「ではケイトさんどんな依頼を受注しますか?」と受付嬢がきいた。

「そうだな……」ケイトは受付嬢から提示された様々な依頼書を見た「緊急の依頼か、日数もちょうどいいし、アセテートか、ここから近いしな。初等生たちを連れても大丈夫だろう。これにしよう」


「ではこちらの依頼をお受けしますね。依頼人はレイト商会のドナルド、階級は問わず、行程はアセテートという町からネロという町まで人と荷物の護衛、道中で二泊する予定です」


「護衛の依頼ですか?」そうマリーが聞いた。

「ああ、治安のいい地域だから盗賊に襲われる可能性も少ないし、護衛の任務は結構わりのいい依頼だ。そもそも盗賊なんかは魔法使いが護衛にいるとわかれば襲ってこないからな」

「楽そうだな。ほとんど遠足で金がもらえるならこれでいいじゃないか」そうログが言った。


「それが最近はそうでもないのよ。実はある商人の一団が一般人なのに魔法使いの格好をして魔法使いになりすまして輸送したことがあったの護衛料を節約するために、魔法使いがいれば盗賊は襲ってこないから、それが商人たちの間に広まったことがあったの。でも盗賊たちも馬鹿じゃないからそれに気がついて魔法使いの格好をした人間が護衛にいても襲うようになったの、だから魔法使いだから襲われないと思って油断しないでね。依頼の受注を完了したわ。アセテートにいってレイト商会のドナルドに会って、この依頼受注証明書を見せてください」

 5人はギルドから出てアセテートの町へ向かった。

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