第28話 また悪魔かよ

「おいおい、なんだおっさん。その格好はなんだ? ここの学生には見えねえけどな」そうログが話しかけた。

 その男は黒いスラックスに白いシャツを着ていた。中年で、痩せこけた男だった。どうにも魔法学校に似つかわしくないし、の住民としては異質な格好だった。

「ハルトこいつに恨まれるようなことしたか?」とログが振り返った。

「ハ……ルト……名前……ハルト……」と相手はろれつが回らない様子で奇妙な印象を与えた。

 もちろんハルトにはこの男など見覚えがない。


「なんだこいつ気味が悪いな。酔っ払っているのか?」とログが言い放った。

 男は包丁を三人の方へ向けるとぶつぶつと何かを唱えると包丁の先が赤く光った。

「伏せろ!」とログが叫んで二人に覆いかぶさって地面に伏せた。

 包丁の先から赤い光線がでて三人の頭上を通っていった。

「こいつ攻撃魔法を」とログが地面に伏せながら言った。

 三人は立ち上がって態勢を整えると庇うようにケイトが前に出た。

「もしかして悪魔なのか……」とケイトは動揺しながら言った。「いいか、ふたりとも後ろに下がっていろ」

「ケイト下がっていろ」とログが意気揚々と言いながらケイトの更に前に出た。

「ログ、お前がどうにかできる相手じゃない。危ないから下がっていろ」ケイトは上等生らしく二人を守ろうとするが明らかに狼狽していた。

「あんたこそ死にたくなければ下がっているんだな。こいつ俺たちを殺すつもりだ。さっきの魔法、やつの射程はおよそ4メートルほどだ。それ以上距離を取れば攻撃は食らわない。それにあの魔法は魔法具から直線方向にしかいかない。だからやつが構えた瞬間に地面に伏せればいい。だが――」

 

 ログは魔力を高めて突然すごい速さで相手の懐に入り込んで顔面をぶん殴った。相手はとてつもない勢いで吹き飛んで体が後ろに転がっていった。


「だけど今は魔法具がないから体術で倒すしかないな」

「ログやるじゃないか」とケイトは唖然としていた。

 男はゆっくりと立ち上がると今度は包丁を赤く光らせるとログに切りかかった。ログは華麗にその包丁を避けると今度は顔面を拳で打ち上げて腹を蹴り飛ばした。また男は吹き飛んでいった。だがゆっくりだがまた男は立ち上がった。

「ふん、体力はあるようだな」

「ハルト! 先生を呼んできてくれ! ここは私達で食い止める」

「あんたもいった方がいいんじゃないのか」とログが言った。

「バカを言うな。初等生だけに危険なことを任せられるか。ハルト頼んだぞ」

「でも二人で大丈夫なの?」

「いいから行くんだ」

「わかった待ってて」

 ハルトは振り返って走り出した。


「逃さ……ッンン……逃さんない……」と相手がつぶやいた。

「おっと、お前の相手は俺だ」とログが勇み立った。

「邪魔する……お前た……ちは殺す……」

「やってみろよ」

 相手はログに魔法具を向けた。

「ログ危ない! 『初級雷魔法レイ・フーミネ』」

 ケイトはホウキを相手に向けた。ホウキの先から白いジグザグとした光が出ると男に当たるとしびれさせた。その隙きにログは相手をぶん殴った。男はまた後ろに転がっていくと砂埃を巻き上げた。

「やるじゃないかケイトさん」とおどけたように言った。

「人に当てるのは初めてだ……」ケイトは震えながら言った。「やつは生きているのか?」

「手応えはあったが生きているはずだ。さあ立ち上がりな」

 砂埃が収まると男の姿はなかった。

「消えたぞ。一体どこに消えた」とログが叫んだ。

「ハルトを追おうとしたのかもしれない」

「やつが魔法を使ったら魔力ソウルで位置がわかるが」

「いやその必要はない。ハルトは職員室に向かっている。私達も職員室に向かえばハルトと合流できる」

「なるほど、それで職員室ってどうやっていけばいいんだ?」

「……あっ!」とケイトが叫んだ。

「どうした?」

「もしかしたらハルトも職員室の場所知らないかも」

「えぇ……」

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