第31話 安西さんの気持ちは
「で、
空き教室から教室へ戻った最中、俺は
「どう思ってるのって、そりゃあ、な」
二か月くらい寝顔を見せられて、定期テストから勉強会をするようになって、一緒に仕事もして、助け合って。そんな
「ま、そうだよね。言わなくても分かるよ。私も男だったら安西さんに絶対惚れてるもん」
「じゃあ、何で聞いたんだよ。もしかして、また忠告か?」
お節介のことで何度も迷惑をかけてきたから、天江に止められるのは分かっている。だけど、まだ安西さんとは――。
「今回は止めたりなんかしないよ。どう思ってるのか聞きたかっただけ。眠り姫の気持ちも聞けたからね」
「安西さんの気持ちって何だよ」
「な~いしょ! 眠り姫に直接聞いてみたら?」
「そんなの聞けるわけがないだろ」
聞いてみたい気持ちはあるが、俺のことどう思ってる? なんて台詞、恥ずかしくて言えるわけがない。それに安西さんとは、まだそういう関係は早い気がする。今のこの関係を少しでも長く続けていたい。
「ま~そうだよね。芳樹だもんね~」
そう言って、天江はクスクスと笑いながら、話を続ける。
「まぁ別に~、私のことじゃないからいいんだけどさ。何かいつもみたいにうじうじ考えてるっぽいし。ただ幼馴染だから少しだけアドバイスはしてあげるけど、このままだと、安西さん取られちゃうかもよ?」
「……そうかもな」
「そうかもなって、いいの? 好きじゃないの?」
「……す、嫌に決まってるが、安西さんが考えた事だろ? 俺はそれを応援したい」
安西さんが俺のことをどう思っているか分からないけど、他に好きな人がいるんだったら応援してあげたい。変に俺が告白して、悩み始めたら嫌だ。それよりは素直に諦めた方がいいだろう。
「やっぱり、そういうところだよ。芳樹がダメなとこ」
「別にダメじゃないだろ」
「はいはい、そういうとこ、そういうとこ! あ~あ、どうしてこんなやつのことなんて。……はぁ、私も苦労させられたな~昔は。安西さんもそうなんだろうな~」
「は、何言って――」
「べ~つに。昔のことだよ」
ニコッ笑顔を見せた天江は、そう言って廊下を走り出した。
「あ、そういえば先生に聞いたんだけど、次の時間、席替えするって! 安西さんと隣の席になれたらいいね」
「おい、天江!」
天江の昔のことも気になるけど、それよりも今は。
安西さんと隣じゃなくなる?
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