第25話 覚醒する安西さん
「よし、全員指定の場所に着いたな。今から班に分かれてカレーを作ってもらうが、危険なことはするなよ。もし怪我をしたり、分からないことがあったりしたら、すぐに近くにいる先生に言うように」
目的地に着いた俺たちは、全員集められ鷹先の話を聞いた後、班に分かれて、カレー作りをすることになった。机の上にはカレールーや人参、じゃがいもなど、カレーに使う具材の他、火を起こすための炭や木材が置かれている。
「これ、まずは火おこしからだよな」
そう言って、
「そうだね。マッチもあるし」
「じゃあ、
ついさっきまで起きていたはずなのにもう寝てる。
「……まぁ、私一人でなんとかするから、男子二人で頑張ってよ」
「おっけー、こっちは任せてくれ!」
というわけで立橋君と火おこしをすることになったんだけど――。
「これ、難しくないか?」
「……そうだね」
マッチで火をつけて、新聞紙を使い、薪に火をつけるところまではできたのだけど、あまり燃え移っていなかった。
「あおいではいるんだけどな。悪い、斉藤、もうちょい新聞紙足してくれね?」
「わかった。はい、これでどうだ?」
「うん、いい感じだ」
「そっか。天江、そっちは――って、何やってんだ」
天江は指を切ったのか、人差し指を唇に当てていた。
「ごめん、芳樹。いつもあんまりこんなことやらないから」
「お前、いつもパソコンと睨めっこしてばかりだったもんな。はい、これ、絆創膏。まずはあっちで手を洗ってこい」
「うん、そうする」
そういって、天江はお手洗いがある方に走っていった。
どうしよう。他の班は材料の下ごしらえを終えて、カレーを作り始めている。このままだったら下ごしらえも時間かかるな。火おこしは終わっているとはいえ、ご飯も炊かないと――
「どうしたの?」
「安西さん?」
寝ていたはずの安西さんが起きていた。目をぱちぱちしながらも、首を傾げてこっちを見てくる。
「安西さん、良かった。今、火おこしは終わったんだけど、下ごしらえがまだできていなくって」
「うん、分かった」
いつも実家のお手伝いをしている安西さんなら、この状況を変えてくれるかもしれない。
「じゃあ、まずは――」
「ごめん、戻った。あれ、眠り姫が起きてる!」
天江も戻ってきた。これならまだいけるはず。
「
「斉藤くんはじゃがいもを」
「……えっと、誰だっけ?」
「
「立橋くんは……何しよう?」
「何しようって何?」
「私は他の材料を切っていくから、早く一緒にカレーを食べよう!」
「「「おー!」」」
ということで安西さんが中心となって、カレー作りをすることになったんだけど。
――すげぇよあの班。すげぇ勢いで完成させてるぜ。しかも眠り姫が起きて指示してる。
――マジかよ。あの眠り姫が? 寝てるだけじゃなかったのか。
――立橋君、カッコいい!
――天江さん、料理しているところ映えるな。
――眠り姫の隣にいるあの人だれだっけ?
と、周りが噂するほど、順調に調理が完了し、目の前にカレーが出来上がっていた。
「やっぱり、うまいよ、カレー」
立橋君はすでに食べ始めている。
これも安西さんのおかげだな。
「安西さん。今日はありが――」
働いて疲れたのだろう。隣には寝ている安西さんがいた。
「お疲れ、安西さん」
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