第92話 ファミレス
真夏の盆地の昼下がりはめちゃくちゃ暑い。鍋底にいるようなものだ。この時間帯にオートバイで走り回るのは正直楽しいものではないし、昨今の酷暑では場合によっては命に関わる可能性すらある。
沙織、裕子、綾の並びで甲府市街から少し離れたファミレスに移動した。土地勘や彼女の事情を鑑みてお茶をするファミレスは沙織に決めてもらうことにしたからだ。女子高生だから小洒落た喫茶店で女子トークなんてこともしてないし、何よりオートバイ乗りは席から駐車場に停めているオートバイを眺めることができる立地のほうが優先されるのもあるからだろう。尤も、沙織がオートバイ仲間とお茶をする。なんてシチュエーションは先程の話から聞いても無さそうだが、実際に店内に入るや否や、口を開いた言葉はまさにそれであった。
「バイク仲間とお茶をするのが夢だったんで、今日は嬉しいわ。」
沙織はジャンバラヤとコーラ、綾はピザとアイスコーヒー、裕子はハンバーグランチとアイスティーを頼み、朝以来の食事と鍋底からの退避を享受することができた。
沙織が開口一番に聞いたのはどこに住んでいるかだった。二人は千葉に住んでいて、シェアハウス的に同居してて綾は大学生で裕子はよんどころない事情で大学を休学中と説明したが、シェアハウスって何?と聞かれた。令和時代は時代の流れ、周りが使っているせいかカタカナ英語が昭和と比べると遥かに蔓延していることに気づかないもので、まあいわゆる共同生活をしている。と説明することになったわけだが、この後の会話でも端々で沙織が首を傾げる単語をついつい無意識に出してしまうことになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます