第5話 鶴峠から奥多摩へ

「あー、やっぱりここは平成初期か昭和ってことね…。」

 綾は自分の時計を見ても令和になってるしスマホも令和5年を指している。何故か電波もしっかり届いているのだが・・・。


 それはさておき、とりあえずどうするかGoogleMapを見てルートを決める。GoogleMapには甲武トンネルが開通しているように見えてるのでこのスマホは令和のままのようである。今いる場所は山梨県上野原市棡原(ゆずりはら)を指している。


「鶴峠からなら行けそうね。それにしても今が令和じゃないことだけはわかるけどこのスマホ役に立たないな(笑)」


 風光明媚。というのはちょっと道路が狭い、峠までは断崖絶壁というこのルートを走り切ると、ちょっとした集落に出る。そこを右に曲がると奥多摩湖方面だ。こうして自然の中を走っている分には何ら変わらないようだけど、道行く車がことごとくレトロカーというのが気になりだすとやはり目で追ってしまうものである。


 三頭橋まで来ると、そこはものすごい台数のバイクが行き来していた。勿論、バイクは昭和時代を席巻したNSRや、TZR、RG-Vガンマなど2ストロークスポーツだけでなく、綾が乗っているVTZ250も見るが、VFR400R、FZR400、GSX-R400、GPZ400Rなど4ストロークでもやっぱりスポーツ系が席巻している。


「うーん、なんというか殺気立ってるオーラを感じるわね。やっぱりここは昭和なんだろなー。」


今見ている、現実は夢としか思えないので非常に冷静な綾ではあるが、そうはいえ奥多摩周遊道路を走りたかったので三頭橋を渡り、川野へ向かう。


「お!料金所がある。やっぱりここは昔の世界なんだ(笑)」


うっすらがはっきりとした瞬間である。綾は料金所で100円を支払い、いよいよ奥多摩周遊道路…もとい、奥多摩有料道路へ入るのだった。


殺気立ったオーラは現実のものとなる。コーナーというコーナーで見たこともない速度で走り去るオートバイたち。webで見たあの光景。ドラえもんヘルメットやらヘルメットにしっぽが付いてたり、トレーナーにチームなんちゃら。とか令和に見ることが無かったあのローリング族。というものだった。勿論、全員がそうではないがとにかくバイクが多い。月夜見第一駐車場に着くころには怖さと物珍しさとオートバイの多さに疲れてしまった綾。駐車場はやはりオートバイで満杯だが、ここで売店でジュースを買う。缶コーラで250ccである。今どきならペットボトルで500ccなのにこれは逆に高い。と綾は思ったがもうすんなりこの時代を楽しむことにして、ここからの奥多摩湖の景色は素晴らしい。天空から湖を仰ぐ。というのはこんな感じなのだろう。と今日の目的地の一つを達成できたことに今は感動しておくことにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る