吐き溜め

藤隆暗澹

第1吐 用事とは、、、


ある日、仕事を「用事があるから」と欠席した男がいた。

シフト制の仕事で、午後からの出勤だった彼であったが、その日は午前中に1時間程度の会議が、行われる予定だった。

彼は、その午前の会議に出席する事なく、上司ではない同僚に言った。

「用事があって会議に出れません。」


用事とは何か・・・。


複数の役職を兼務している彼のため、別の業務での動きがあったのかもしれないと考え、特に追求はしなかった。

しかし、どうやらそうではないらしい。


結局その『用事』がなんだったのかは、わからない。

しかし、仕事に勝る用事とはなんだろう。

納得できるものとしては、自身の通院や家族に不幸があったくらいのものだろう。


この何もない田舎街で、彼の出身地から200㎞以上も離れたこの田舎街で、独身30歳の彼に、仕事に勝るプライベートな用事は起こりえるだろうか。


起こり得たとしてもだ。

仕事を『用事がある』の一言で欠席するのは許される事なのだろうか。

せめて「家族の事で外せない用事が、、、」と具体的でなくともカテゴリくらいは伝えるべきではないだろうか。


言えないのか、言いたくないのか、はたまた言う必要は無いと判断したのか、、、


いずれにしても社会人としてはあまりよろしく無い事だと思う。


人生において、仕事が最優先という考えを持っているわけでは無いが、プライベートな事より他人に対して責任が乗る分、ある程度仕事を優先せざるを得ないのは今の現代社会の常であると考えるが、その考え方は古いのだろうか。


彼が会議内で担当していた資料は、しっかりと完成されている。

それをプレゼンするのも、事前に他の同僚にお願いし、滞りなく進む。

なるほど、不足はない。


そうなってくるとその同僚にも疑問が浮かぶ。

「用事ってなに?」とは聞かなかったのだろうか。

仕事を「用事」を理由に欠席することに何も疑問に思わなかったのだろうか。


午後、出勤した彼は何事もなく仕事に着く。


もはや彼の言った用事が何であったかは興味がない。


今思うのは

『用事があるから、』とは何か。

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