夜風旅行

倉橋 普

第1話

修学旅行 。

きっとそれは、皆

楽しい物で終えるのだろうけれども 、

私にとっては、楽しい物などでは

ありませんでした 。


私は、学校行事のバスを好んでいました

それは 、友人と話す事が出来る、など

そういった馬鹿げた理由では 、

ありませんでした 。

自分は 、自身の居ない反対側の窓の景色を

見つめては 、落ちている お菓子の抜け殻

珈琲が入っていたであろう 抜け殻

煙草の吸殻、、、


それらを私は ただひたすらに見つめ

目で追っては 別の殻を見つめる

といった 妙な遊びを大変好んでいました

人と話すのは、自分にとって

どうでもいい事 、

または 生に対し興が冷めるような

そんな感覚を 覚える程のものでした

私は年ながら 相手に併せたり

態と空気を読まず笑わせたりといった

パフォーマンスをして見せました

けれども私は 今も昔も 、

人が一人も寄り付かないといった

そんな雰囲気を纏っているのでしょう

独りで 、 広い 、狭い 、暗く 、静かな部屋に

、、、例えば 10年監禁されるとしよう。

私は耐えられる 、私なら耐えられると

そう感ぜられる程には

慣れっ子なのでした 。

けれども 修学旅行は団体での

行動が 多く見られるものです 、

自分は 、上辺だけの友人 。

二人で 旅行の行動を共にする事を

決定されてしまいました 。

「 あぁ 、 馬鹿馬鹿しい 」

だなんて 思っていましたが

そんなものは序の口なのでした

旅館です 。

旅館は 、、、、数人での泊まりだと

そう、聞いた頃には全てが遅く

ましてや 、同じ風呂に 身ぐるみを全て剥いで

無防備な状態で 同じ湯を分かち合う

だなんて 気持ちの悪い 。

大浴場 、、 出来る事ならば

真夜中1人で静かに浸かりたかったものだと

頭を悩ませましたが 、我儘を言ってしまっては

今まで笑顔を振りまき 合わせてきた自分が

益々 、 阿呆らしく思えてしまう 。

何を言っても無駄だろうと 、検討付いたので

頼み込むことはせず 。

結果的にそれが正解だったと 後に知りました 。


風呂を出ては食事を出され 、

私はこれ以上何をさせる気なのだと

少々ビクついては 出された食事を見つめました

何だこの量は だなんて思いましたが

周りの人は皆 平気な顔で食べているではありませんか 。

私が可笑しいのか 、 空気を沢山肺に入れては

手を合わせ 口の中に食べ物を押し込み

飲み込みました 。

けれども全ては食べられず 隣の

( 顔や名前は覚えておりませんが )

女の子に 残りをあげては 再度手を合わせました


談笑 。


そろそろ 1人になりたいと

思っていた所に私は ふと目を奪われたのです


ただのカーテン 、 、

私はカーテンを捲り 中に入りました 。


出窓 そう出窓です 、

自分は出窓の縁に 腰掛け

窓を少し開けては その暗さに浸りました

風は冷たく 気を張っていた自身の頬を

優しく撫でるように 風が私の体温を奪っていくのを感じ取りました 。

大変心地よく 、

私は ここへ来てよかったと初めて 、

そう 、 思わされたのです

暗い夜道を歩く人影 、

それさえ私には美しく見えました 。

古き日本の建物が沢山並んでいる

そんな 心奪われる( 村と呼んだ方が自分はしっくりくるので村と呼びますが )

村に対し 、灯りがひとつもありはせず

ただ、月光だけが差し込む村に 、

気づき これだ、と

軽く頷き 、 美しいと心奪われた理由に

納得したように窓にもたれ掛かりました 。


すると カーテンの外から

「何してるの? 寒いよ?」


あぁ 。 ありがとう 。

私は相手の善行にそう返し

大変 虚しさを覚えました 。

それから私は そっと窓を閉めて

布団を敷き 、 そのまま潜っては

眠ったのでしょう 。

それからの記憶は定かではありませんでした

けれど、あの日の外の景色 、

感じた温度だけは 、

鮮明に覚えております 。



人間は上辺では いい人を演じます

けれども悪い事ではありません 。

私もそうであり皆も同じですから

けれども、裏が汚い人は違います

人を虐めるような真似をする

例え 保育園児だとしても 、、

例え 小学生だとしても、

例え 、中学生だとしても

例え 、、高校生だとしても

善悪の区別が付かずとも

その人の本質が「それ」なのだから

きっと そういった人間はろくなものでは無い

けれども、また 、そういった人間は

普通や、常識を偽る事が得意なのである

人間とは腐っている 。

だけれど 、それが人間であるのだから

大変麗しい 。

腐っているのは私だけなのかも知れません 。

私には、普通や常識 、異常 、

すらも区別が付かず 、理解できかねるもの

なのですから 。

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夜風旅行 倉橋 普 @kurabasi_99

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