第110話 やっぱり支援魔法はすごい
「クルルゥ」
ユキテンゲはひらりと俺の槍を躱して代わりに冷気を孕んだ突風を浴びせてくる。しかしその風はミーコさんが付与してくれた防護の支援魔法で威力をかなり減衰されていた。
「っ!!」
これなら、連続して攻めに出ることもできる。俺はそう判断して、距離を取ろうとしたユキテンゲに追いすがり、更に槍の穂先を突き出して追撃を加える。
「クルゥッ」
穂先がユキテンゲの身体を掠め、それは短い悲鳴を上げる。冷気と風による撹乱が無いだけでこれほど楽になるとは驚きだった。
ユキテンゲはそのまま上空に逃げ体勢を立て直そうとする。俺は槍を長く構えて相手に何とか届くように追いすがってみるが、流石に距離が離れすぎている。
「アクセルッ!!」
ミーコさんの声が響いて、周囲の景色がスローモーションになる。モビの支援す来るを使われた時と同じ感覚だ。
「っ!!」
ならば、と思って俺はしゃがみこんで、足を一気に伸ばして跳びあがる。周囲の空気は水の中に居るように粘り気のような抵抗を帯びていて、その中でなら蹴伸びをするように高いジャンプができるはずだった。
比喩ではなくまとわりつくような感触がする空気をかき分けて、俺はユキテンゲへ肉薄し、槍を振りかぶる。
「――」
ユキテンゲの鳴き声が届くよりも早く、俺の槍がユキテンゲの身体を貫く、その瞬間それと目が合ったような気がした。
雪のようにそれの体液が舞い散る中、俺は槍を引き抜いて地面に着地する。それと同時に周囲の景色が普通の速度に戻り、空気がまとわりつくような感覚も消失した。
「倒したみたいね」
「え、ああ……倒した……のかな?」
正直なところ、こんなにあっさりと倒せてしまうのは、なんというか、拍子抜けというか実感がないというか、今まで手こずっていたボスモンスターと同じボスなのかどうかすらも疑ってしまいそうだった。
「こんな感じで必要な支援を必要なタイミングで使えれば体力と耐久値の低いボスモンスターなら簡単に倒せるのまあこれから支援魔法を覚えるには時間がかかるからテイムモンスターが持っている支援スキルでこれの代用をするとして持っているのは『速』と『体』よねこれは支援魔法のアクセルとアイアンボディに相当するからそれを使うにふさわしいタイミングを見極めなさいまずは『速』を使うタイミングだけど――」
滅茶苦茶早口でミーコさんが説明――というかまくしたてているのを聞きつつ、俺はユキテンゲの方へ歩いていた。
その理由は俺にも確証があった訳ではないが、ある種の直感のような物だった。
一歩、二歩と進んでユキテンゲへと近づいていく、その時、仮面型デバイスのモニターに三度目となる表示が現れた。
名称:ユキテンゲ 状態:瀕死
採取可能素材(死亡時):雪天花の振袖、雪天花の爪、雪天花の頭殻
テイミング:可
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます