第108話 ミーコの脳内

 セーフ!!


 私は一対一でのレクチャーをする羽目になった時に、確かにそう思った。


 なにせコンビーフさん以外は、俺様系の性格してそうな超絶イケメン・クラスカースト最上位の陽キャ女子・性格きつそうな地雷系ファッション女子である。私達の住む世界とはあまりに違い過ぎる。


 内心ハズレを引いた三人を煽っていたが、次の瞬間には私はその見通しが甘かったことを痛感している。


「ミーコさん」

「ひゃ、ひゃいっ!?」


 私がそんな事を考えていると、コンビーフさんは私に声を掛けてきた。


「サーバーに残ってるログ読んでて、ロールごとの基本方針で分かんない表現があるんだけど」

「あ、そ、それは、です、ね」


 私はコンビーフさんの質問に丁寧に答えつつ、彼の素性に思いを巡らせる。


――あ、そうそう。この事誰にも言っちゃダメよ。どんなに親しい知り合いだったり両親でも。


 柴口さんと呼ばれていた人から教えられた事実は、私達の度肝を抜いた。


 ……いや、私としては「度肝を抜いた」なんて表現は使いたくないんだけど、もう本当にそうとしか言えなかった。


 俺様系イケメンは、カリスマ的なストリーマーで、現在謎の休業中で話題になっている東条匠馬。


 女性二人は大手事務所のトップストリーマー、犬飼ちくわと珠捏ねこまその人。


 そして目の前にいるのが、ストリーマー界隈どころか私達ダンジョンハッカーですら注目していた日本初のテイマー、モブである。


 モブに関しては、モーラビットのみのテイムならば国外からの目は無かったのだが、サラマンダーをテイムしてしまった結果「二体目」かつ「ボスモンスター」のテイムを成し遂げてしまい。今や国外からも大注目の存在である。


 そのプレイスタイルも堅実で、自分が著名人であるという事を全く鼻にかけず、ダメなものはダメとはっきり言う性格だ。現に私は「モブ」のファンだったし、ちょっとだけだけどモブと東条匠馬の絡みを妄想したこともある。


 東条さんは近接火力なので、サカキと一緒になってると思うけど、恐らく彼女も私と同じくらいテンパっている事だろう。


「うーん……つまり、タンク役が傷を負ってもすぐには助けに行っちゃいけないのか」

「あ、は、はいっ……その……回復属性魔法と支援魔法はクールタイムが大きいので、支援の更新間際だとその関係で支援が切れてしまうことがある、んでっ」


 モブ――いやいやコンビーフさんは、すごく従順に話を聞いてくれるし、話の理解力もかなり高い。クールでドライなキャラだと思っていたけど……物腰も柔らかいし、思ったよりも優しい人なのかもしれない。


 私はそんな事を思いながら彼にバフ・デバフ役としての基礎を教えていった。

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