第83話 ネットパトロール
家に帰り、ネットコミュニティの巡回をする。
もうほとんど習慣になってしまった行動だが、はじめは自分がどんな事を言われているかどうかのチェック。つまりエゴサ―チ目的だったが、最近はそれ以外の趣味も出てきている。
「みんなーお疲れー」
「おつかれー」
「おつー」
それはファン同士の交流という奴だ。
別に「実は超大人気ストリーマーだけど身分を隠して優越感に浸りたい」とかそういういやらしい理由ではない。情報収集目的で話していたらいつしか打ち解けてしまったのだった。
「今日はちくわちゃんもねこまもモブも配信なしかぁ」
「なんだろ、みんなで案件の撮影とか? ほら最近ソシャゲでストリーマーコラボってあるじゃん」
「いやーでもなー……もしかしたらなんかデカいボス討伐に向けての作戦会議してたりして」
当たらずとも遠からずな予想も含めて、色々な話が展開しているコミュニティだが、ここに居るとある程度ファンの注目している対象が分かったりするので、助かっていたりもする。
「ところでウサモグラさんもダンジョンに潜ってるんでしたっけ?」
「あ、うん。ダンジョンボスを倒せればいい感じの副業にできそうだから」
ウサモグラとは俺のHNである。副業でダンジョンハッカーをしているフリーターという設定……いや、これは事実か、まあそういう認識をみんなからは持たれている。
「ウサモグラさん的にはモブ達の次の目標って何だと思います? 同じダンジョンハッカーとして目星くらいは付けられるんじゃないですか?」
「いやー……俺なんて初級ダンジョンのボスを倒すので精いっぱいだから、あんな鮮やかに倒していく人たちのことはちょっと……」
「いやいや、ボスモンスター倒せるだけですげーから」
皆と会話しつつ、情報を集めていくと、どうやらやはり、まだいくつか初級ダンジョンを攻略して箔をつけていくのではないか、という意見で一致していた。
確かに普通に考えれば、そうやって実績を積み上げていくのが王道なダンジョンハック系ストリーマーのあるべき姿である。
「なあなあ、この動画で言ってる事マジだと思う?」
チャットを続けていると、唐突に動画のURLが貼られる。なになに、タイトルは――「モンスターテイミングに新たな条件発見!?」?
動画を開くと、一分程度の動画で、チャンネル登録とか高評価のお願いがされた後に、本題が始まった。
「――海外のダンジョンハッカーとか、日本で唯一のダンジョンハッカーのモブさんは、常に一人で戦った時にテイムを成功してるんだ。だから、テイミングが可能・不可能かは別として、一人で戦うことがテイミング成功の近道なんじゃないかな……って僕は思うんだ」
その後もなんか色々とゴチャゴチャ言っていたが、どうやら「テイマーになりたいならソロで潜ったほうがいいよ!」みたいな事を言いたいらしい。
「マジかどうかはともかく。考えなしにソロで潜るのは危ないからやめたほうがいいよ」
俺が掻きこもうとしたことと同じことを、別のチャット仲間が書き込んだ。
「うーんまあ、何でもいいからテイムしたい! ってタイプなら一人で初級ダンジョン潜って周回すればいいんじゃない?」
「そもそもテイムってできる人ほとんどいないからな、誤差みたいなもんだろ」
他の人たちも、同じような反応だった。まあ確かに、そんな簡単な条件でテイムの可否が変わるなら、もっとたくさんのテイマーが居てもおかしくないもんな。
俺はパソコンから離れて風呂に入ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます