第78話 リアルでクソゲーをさせるな
「あー、ファフニールってボス、そんなに強いの?」
『え、あー、うん、ちょっとボクたちじゃキツいかも』
『はぁ……なんでモブ君ってこういう厄介事持ってくるのかしら……』
『えーでも、ファフニール討伐って上級への足掛かりには絶対必要だし、東条さんがらみ関係なく目指していいかも』
成り行きで東条君の手伝いをすることになったことをボイスチャット越しに伝えると、三人全員からそんな反応を返された。
まあ、毎日毎回、直接顔を突き合わせて会っていると、お互いプライベートな時間もとり辛くなる。という訳でチャットアプリのボイスチャット機能を使って、お互いに小さな近況を報告し合う事にしているのだが、今日の一発目が俺の報告で、柴口さんは頭が痛いと言いたげだった。
『んー、優斗さん。サラマンダーと戦ったことはあるじゃない?』
「ああ」
『それの物凄く強いバージョンって言ったらいいのかな。まあちょっとこれ見てみて』
紬ちゃんがチャット欄に動画のURLを貼ってくれたので、俺は何の気なしに開いてみる。
その動画は配信の切り抜きのようで、翼を持った赤黒いドラゴンが、十数人は居る探索者たちを相手取って一切引くことなく戦っていた。いや、むしろドラゴンに押されている……?
そうこうしているうちに、元気に動いている人影が徐々に少なくなっていき、最後はカメラが大きく揺れてボス部屋からの撤退が写されて、その動画は終わっていた。
『クリスタルゴーレム級の硬さを持つ鱗と、圧倒的な空中での機動力、そして体力もあって近づくだけで火傷する程の体温――まあ、そういう相手なんだよね』
「え、ちょっとまって、こいつ勝てるの?」
この動画では十人単位で挑んでも、数分で返り討ちになっていた。頭数を揃えたところでどうなるとも思えない。
『勝ってる動画はあるよー、これとか』
そう言われて愛理が張った動画を再生する。そこにはやはりさっきと同じ十数人規模の探索者たちがいた。さっきと違うのは、全員が弓や銃を装備している事だろうか。戦いが始まった時点では、ファフニールは高く飛んでいた。どうやらロングレンジでブレスを吐いて来るいやらしい戦い方もするらしい。
『ファフニールは鱗が硬いんだけど、それ以上に魔法耐性が高いんだよね。一応雷属性は通るみたいだけど、雷属性使える人そこまで多くないし』
だからといって、遠距離だけでどうしろっていうんだろうか。俺はそんな事を考えながら動画を見続ける。動画では炎のブレスで大量にけが人を出しながらも、全員が攻撃し続けていた。
そして矢とか銃弾でかすり傷が大量についたファフニールは、遂に飛行を止めて地面に降り立つ、それと同時にカメラ外からまた数十人の近接武器を持った探索者たちが駆けていき、重い金属音を立てながらファフニールをボコボコにしていく。
「……」
『まあこんな感じで遠距離の火力役十人くらいと近距離の火力役、あと補助役の数人で挑むのが普通だね』
あくまでフラットに倒し方を話す愛理に、思わず俺はこのことを聞かずには居れなかった。
「これ無理じゃね?」
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