第70話 救護保険とかの説明
「でも、なんか先輩って違和感あるな」
東野くんから褒められたことに上機嫌になっていると、急にそんな事を言われた。
「なんだろ、採取を他人にまかせっきりというか、採取ポイントの探し方が変というか……ふつうならそこら辺は探索の初歩だからまずできるようになるんだが……」
そう言われて、俺は思い当たる節がしっかりとあった。いつもモビが持ってきてくれるし、最近は天井が無ければマンダの上にのって、ポイントを上から見つけてしまう手っ取り早い方法を取ることが多かった。
「ま、まあいいじゃん。それよりボスは倒すの?」
あんまり怪しまれても困るので、俺は東野くんの意識をダンジョン攻略へと向けさせることにした。
「ん、ああそうだな、槍マスタリー6の先輩と大剣マスタリー7の俺なら何とかなると思うし、挑戦してみるか?」
東野くんは俺の話題転換に乗ってくれたようで、少し考えつつもその提案をしてくる。
「ちなみにここのボスって?」
「クリスタルゴーレムだったかな? 動きはそこまで素早くないけど、ひたすら重くて硬い相手だ」
「そっか――」
動きが素早くないなら、まあ何とかなるんじゃないか。俺はそう思いつつも、もしもの場合があるかもしれないと識別票を改めて確認する。
「うん、救護保険も適用範囲内だから大丈夫だね」
識別票のアイコンをいくつかタップすると、十字架のマークがバックに書かれているページが現れる。そこには緑色の文字で「補償範囲内」と書かれていた。
救護保険とは、ダンジョン内でもし致命的な傷を折ったり、心停止した場合に救護班に助けてもらえるシステムで、中級者向け以下の、比較的安全なダンジョンに適用されているものだ。ちなみに上級者向け以上のダンジョンには無い理由は、単純に助ける人がいないという理由だったりする。
この保険のお陰で高校生とかが初心者向けダンジョンに気軽に潜ったりするようになっていたりもするが、中級者向けに入るには、成人するか初心者用ダンジョンのボスを倒す実績が必要なので、とりあえずの安全は確保されている。
……って、こないだ柴口さんが話していたような気がする。
柴口さんの言葉を反芻しつつ、俺たちはダンジョンの深部へと歩いていく、時々うっかりとモビを出しそうになるが、その度に思いとどまって内心冷や汗をかいていた。
マンダもだが、モビもダンジョンのマッピングにはかなり役に立ってもらっている。なんせ俺よりも早くダンジョンを走り回り、地形情報を識別票まで送ってきてくれるのだ。モビでマップを確認しつつ、マンダで大体の目安をつけてから移動する。それがいつものやり方なのだが、東野くんが居るのでそれができなかった
「……ん、こっちは行き止まりか」
「じゃあさっきの道を違う方向に行こうか。そろそろボス部屋だと思うし、慎重に行こう」
そんな事を話しながら、俺はいつもより不便なダンジョン探索を続けるのだった。
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